研究課題
研究目的である「中性子捕捉療法による治癒率向上と治療予後改善を目指し、中性子捕捉療法での腫瘍への線量をリアルタイムに観測するシステムの開発」を実施するために、今年度は国立がん研究センター中央病院で導入中である加速器を利用した中性子捕捉療法(BNCT)システムのコミッショニング作業を行った。腫瘍への線量を知るために必要な中性子の生成量や患者を模擬したファントム内での熱中性子の分布を測定することでリアルタイム測定に向けた準備を行っている。また、加速器で行うBNCTでは加速した陽子とターゲット物質との反応によって中性子を発生させている。そのため、ターゲット物質に照射した陽子の量をモニタリングすることで、発生する中性子の個数を予測することが可能である。今年度は、陽子と生成される中性子の関係も測定し、陽子量から中性子量を患者模擬ファントム内の中性子分布を予測することが可能となった。マウス照射実験への適応も検討するため、中性子照射により誘発される放射能を測定し、放射線防護の観点から安全性について検討し、国際誌への論文投稿を予定している。投稿論文に関しては、中性子の測定のために必要な検出器のモデリングの手法をまとめた論文が国際誌にアクセプトされた。臨床使用も検討するために、患者に照射された線量の担保に関する論文と、照射された線量と臨床的な症状をまとめた論文もそれぞれ国際誌にアクセプトされ、後者は既に出版された。
2: おおむね順調に進展している
リアルタイム測定に向けた陽子と中性子量の関係やファントム内での中性子分布の測定を行ったため。さらに、動物での実験も視野に入れて、照射後の動物の放射化に関しても、放射線防護の観点から検討している。一方で、利用を予定していた京都大学原子炉実験所の中性子場のマシーンタイムは取得できたが、法規制の問題で原子炉実験所自体が稼働出来ていないため、核データの測定などは未実施である。
照射場の物理的特性を測定し、バックグラウンドとなるガンマ線の有無やその強度を推定する。また、検出器が中性子照射によって故障が発生することも考えられるので、遮蔽体などの開発も進める。
中性子照射実験に必要な加速器BNCTのコミッショニング作業に時間がかかっていることと、京都大学原子炉実験所の稼働が遅れているため
今年度までに中性子場の測定が実施できているため、本研究に必要な物品の購入を次年度に行う。
すべて 2017 2016
すべて 雑誌論文 (8件) (うち国際共著 7件、 査読あり 8件、 オープンアクセス 5件、 謝辞記載あり 3件) 学会発表 (5件) (うち国際学会 2件、 招待講演 1件)
Journal of Radiation Research
巻: 印刷中 ページ: 印刷中
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