本研究の目的は、母子保健事業データを二次利用した疫学研究を通じて、(1)口腔ケア・生活習慣・胎内環境と虫歯(う歯)発生との関連を調べ、(2)寄与割合という疫学指標によりう歯発生への寄与が大きい因子を特定し、(3)研究成果を、適切な予防政策の決定・実施を通じて市民・地域へ還元する政策決定モデルを構築することである。平成26年度には、研究計画書を作成し、京都大学医の倫理委員会での審査を受けた後に、神戸市より電子化・連結不可能匿名化された母子健診データを入手し、統計解析を行った。統計解析の結果、14万人の神戸市に出生した子どもにおけるう歯発生数・発生率の推定を行った。また、妊娠高血圧症候群、妊娠時喫煙、在胎週数、多胎、出生体重、離乳食開始月齢、歯磨き・仕上げ磨き、菓子類摂取、フッ化物塗布、受動喫煙などのリスク因子とう歯発生率の関連を包括的に検討したところ、新しい知見として受動喫煙とう歯発生率との関連が見いだされた。そこでこの関連が因果関係を示唆するものなのか確かめるため、プロペンシティスコア解析を行い、受動喫煙がどの程度う歯発生に寄与しているかを表す疫学指標である寄与割合を推定した。
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