昨年度までに、漢方医学における舌診所見を客観化するための要素技術(光源環境、色再現性、画像解析手法)の課題を克服した2種類の舌撮影システムのプロトタイプを完成させたが、今年度はハードウェアおよびソフトウェアそれぞれの要素の追加改良を行い、実証実験に向けた取り組みを進めた。 ハードウェアに関しては、衛生上の問題を克服するために、抗菌加工や排気機構の実装が必要となったことから、抗菌材質への変更および排気ファンの増設を行った。また、舌専用に開発したカラーチャートにも改良を加え、より高い色再現を実現した。 ソフトウェアに関しては、撮影された舌画像から舌領域を抽出するアルゴリズムの精度を高め、より正確な舌色・舌形態の定量化に向けた修正作業を行った。また、舌周辺や舌中心部の凹凸(歯痕・皺裂)などの形態変化に関する情報のスコア化についても、人工知能学習の手法を見直し、より臨床診断に近い判断を可能とするため修正作業を行った。 これらの開発技術をベースとして、定量化された舌画像情報と臨床情報との相関を検証し、舌画像から抽出された色情報が特定の臨床情報と有意に相関することを見出し、論文を作成し投稿した。 また、並行して進めている、ISO/TC249における舌診関連機器に関する国際標準化活動では、光源環境に関する国際規格を成立させ、舌専用カラーチャートおよび視環境に関する国際規格に関しても、規格原案の改定作業を進めた。
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