研究課題/領域番号 |
26860427
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研究機関 | 国立感染症研究所 |
研究代表者 |
加納 和彦 国立感染症研究所, 感染症疫学センター, 研究員 (00383654)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 腸管出血性大腸菌感染症 / サーベイランス / 可視化 |
研究実績の概要 |
腸管出血性大腸菌感染症の届出データについて、時間的分布、地理的分布、性別や年齢等の感染者の属性情報を可視化するウェブツールの開発を行った。このツールでは発生時期、発生場所、感染者の属性情報、病原体のO抗原血清型、毒素型等の情報から症例を検索することができ、時間軸に対して発生数をプロットした流行曲線、個々の症例の詳細情報のラインリスト、及び発生場所をプロットした地図上に、個々の症例がリンクされた状態で可視化される。また集団発生事例を検出するために、時間、場所、病原体の血清型、毒素型の情報を用いてクラスタを自動検出する機能を付加した。自動検出されたクラスタには疑陽性が含まれる場合があり、目視により疑陽性と確認できたクラスタについては集団発生事例から除けるようにした。これにより腸管出血性大腸菌感染症症例の集団発生事例と散発事例を分けて解析し、それぞれの発生動向について評価を行うことが可能になった。ただし、集団発生事例かどうかは症例報告データからだけでは判断が難しい場合もあるため、集団発生事例、散発事例に分けた発生動向の分析には解釈に注意を要する。クラスタの自動検出機能は現在の報告データに対しては広域散発事例の早期発見にも活用できると考えている。今後はこの機能の検証と集団発生、散発事例を分けた発生動向の評価について検討を行う。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
腸管出血性大腸菌感染症の報告データを可視化、分析するツールの開発、および、病原体サーベイランスデータの過去30年以上に渡り蓄積された膨大なデータを可視化するツールの開発まで、年度内に終了することができており、概ね順調に進んでいる。ただし、ツールの一般公開、もしくは関係機関(医療機関、保健所、地方衛生研究所)への公開に関しては初年度は進めることができず、次年度の課題とした。
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今後の研究の推進方策 |
腸管出血性大腸菌感染症以外の疾患のデータについて可視化ツールを開発を進める。また、ツールの公開に関してできる限り年度内に達成できるように努力する。一般への公開はセキュリティの問題や誤った解釈を一般の人に与えてしまう可能性を危惧する指摘があり現段階では実現は困難である。まずは保健所、地方衛生研究所等公衆衛生に従事する関係機関に向けてのツール公開を短期的な目標とする。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初参加を予定していた海外学会発表が都合により行けなくなったため、また、ツール公開用サーバの購入は初年度である必要はなく、次年度に購入することにしたため。
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次年度使用額の使用計画 |
海外学会発表の旅費、データ整理や確認のための人件費、ツールの脆弱性検査委託費、公開用サーバの機器備品費として使用する。
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