研究実績の概要 |
診断・治療の進歩により胃がん罹患後も長期生存できるようになってきており、多くの胃がんサバイバーが存在する。治療とは別に、生活習慣・心理・社会的要因も胃がんサバイバーの予後に関連すると考えられる。しかし治療後の生活習慣・社会的要因・心理的要因の変化を経時的に検討した研究はほとんどない。そのため、胃がんサバイバーを対象としたコホートの立ち上げを行った。 胃がんと診断され、初回治療を愛知県がんセンター中央病院で行う患者を対象とした。インフォームド・コンセントを得た参加者に対して、治療前、治療後1年、治療後3年、治療後5年時点の生活習慣・社会的要因・心理的要因を自記式質問票を用いて収集した。また、血清、血漿、バフィーコート由来DNAを治療前、治療後3ヶ月、治療後1年時点で収集した。院内がん登録情報およびカルテの閲覧により治療などの臨床情報および予後情報を収集した。2017年3月時点で246名から同意を得た。 研究期間中に予後の検討を行うために十分な観察期間がとれなかったため、横断研究を行った。E-cadherin/p53 double conditional knockout (DCKO) マウスモデルにてびまん型胃がんの進行とともに血中miR-103, miR-107, miR-194が上昇することがわかっている。そのため、人間でも同様に上昇するか検討した。胃がん患者50名と同時期に愛知県がんセンター中央病院を受診した非がん患者のうち、年齢と性別を一致させた50名の血漿からRNAを抽出した。ピロリ菌感染歴、萎縮性胃炎、喫煙歴、飲酒歴を調整してmiRNA濃度を比較したが、胃がん・非がんの2群で有意な差は見られなかった。マウスモデルと異なり、人間ではmiR-103, miR-107, miR-194以外の多様なcarcinogenesisのためであると思われる。
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