妊娠中の睡眠障害はよくおこる事象であり、その一型である睡眠時無呼吸症候群(SAS)と妊娠との関連についての報告はわずかである。SASは周期的な低酸素状態の代償として交感神経系が刺激され高血圧や耐糖能異常を発症することが知られており、妊娠においても母体の妊娠高血圧症候群や妊娠糖尿病の発症リスク上昇や胎児低酸素による胎児発育不全を発症することが推測される。SASと妊娠の関連を研究することでこういった母児の疾病予防や治療につながると考える。本研究では、日本人妊婦のSAS頻度、妊婦におけるSASスクリーニング妥当性、SAS合併妊婦のCPAP療法有用性、妊娠高血圧症候群および妊娠糖尿病、胎児発育不全妊婦のSAS検査と治療による周産期予後改善の有無の4つを解明することを目的とした。 ライフワークイベントにより研究を中断せざるを得ない状況となり職務復帰したが、平成27年度はほとんど研究を実施できないまま平成27年12月31日付けで退職した。 研究期間中、平成26年度に筑波大学附属病院臨床研究倫理審査委員会に本研究を申請し承認を得て、筑波大学附属病院産科外来を妊娠初期に受診した日本人妊婦全例を対象に研究への参加について説明をし、同意を得られた方を随時登録した。妊娠初期と中期にスクリーニング検査としてESSスコアを用いて睡眠時無呼吸症候群(SAS)疑い症例を抽出し、夜間パルスオキシメーターでSASの診断を行った。SAS診断された症例は2例であり専門医にコンサルテーションを行いポリソムのグラフィーでと重症度判定を行ったが、SASの治療を開始にまでは至らなかった。 また、妊娠高血圧症候群や妊娠糖尿病、胎児発育不全と診断された疾患妊婦全例を対象に、本研究の説明を行い同意を得られた症例に対して、上記疾患の診断された時点での夜間パルスオキシメーター検査を行った。SASの診断がついた症例は1例であったが、専門医診断を拒否し治療介入症例にはいたらなかった。
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