研究実績の概要 |
7都道府県12農場の1~21日齢の子豚糞便(120検体)からClostridium difficileを分離した。Multiplex PCR法により、同定及び毒素遺伝子(トキシンA,B及びバイナリートキシン)の検出を行った。分離株について、CLSIの方法に従いバンコマイシン、メトロニダゾール、クリンダマイシン、セフトリアキソン、エリスロマイシン、およびシプロフロキサシンに対する感受性を調べた。また、PCRリボタイピングによる型別を行い、人臨床由来株(73株)との比較を行なった。69/120検体(57.5%)から100株が分離された。トキシンA,B陽性株は61株(61.0%)、その内バイナリートキシン陽性の株は26株(42.7%)であった。トキシンA,B陰性の株は、全てバイナリートキシン陰性だった。薬剤感受性試験の結果、バンコマイシン耐性株は検出されなかったが、メトロニダゾール耐性株はわずかながら認められた。また、その他の薬剤に対しては多くの分離株が耐性を示した。子豚から分離された株の多くが人に病原性を示す毒素を産生したこと、抗菌薬関連下痢症に係る抗菌薬に多くの株が耐性を示したこと、CD感染症の治療に用いるメトロニダゾールに耐性を示す株が分離されたことから、豚由来CDが人に感染した際のリスクは大きいことが示唆された。PCRリボタイピングの結果、子豚由来株は、20のリボタイプに分類され、リボタイプ078は全体で3番目に多いリボタイプ(11株,すべてトキシンA、B及びバイナリートキシン陽性)だった。人臨床由来株は11のリボタイプに分類され、子豚由来株と同じリボタイプのものは存在しなかったことから、日本における豚由来株と人臨床由来株との関係性を証明することはできなかった。しかし、海外でヒトおよび動物から頻繁に分離されるリボタイプ078が日本の子豚からも比較的高頻度に分離されたことから、今後も食用動物及びヒトでの調査を続ける必要がある。
|