研究実績の概要 |
これまでの研究より、Clostridium difficileは、家畜の糞便中(特に子豚の糞便中)に高率に含まれていることが明らかとなった。C. difficileは芽胞形成菌であり熱に対して非常に安定であることから、と畜場で肉がC. difficileに汚染された場合、市販肉に長期にわたり残存する可能性がある。そこで、日本における市販肉のC. difficileの汚染実態を明らかとするため、市販肉からC. difficileの分離を行い、その性状を解析した。北海道内6店舗の小売店で購入した鶏挽肉(89検体)、豚挽肉(91検体)、鶏レバー(28検体)、豚レバー(24検体)及び牛肉(34検体)から、増菌選択培養によりC. difficileの分離を行い、同定した。分離株についてリボタイピング、毒素遺伝子の検出、及び8種の薬剤(VCM, MNZ, CLDM, CTRX, EM, CPFX, LVFX, TET)に対する薬剤感受性試験を実施した。結果、鶏挽肉6/89検体(7%)、鶏レバー1/28検体(4%)から計8株のC. difficileが分離され、豚挽肉、豚レバー及び牛肉からは分離されなかった。分離された8株のリボタイプは高病原性を示す株と同一ではなかったが、鶏挽肉由来1(13%)株はトキシン陽性(A及びB)であった。全ての分離菌株はCPFXにCLDMに耐性を示し、TETに7(88%)株が耐性を示した。今回、市販肉から低率ではあったもののトキシン陽性株が分離されたことから、市販肉は市中感染の原因となり得ることが示された。C. difficileは芽胞を形成し過酷な環境に耐えるため、肉からヒトへの伝播を防ぐためには、十分に加熱し食することが必要であることが示唆された。今後、ヒトへの伝播についてさらに明らかにする必要がある。 また、市販肉だけでなく豚の糞便を材料とした堆肥を介した経路についての検討を開始し、堆肥を介した伝播経路について提案することができた。
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