研究実績の概要 |
本研究では、低濃度鉛曝露の神経毒性機序を中枢・末梢およびグリア神経細胞で、神経伝達物質等の濃度や分布の変化を解析、動物実験で発達過程の神経機能低下と神経興奮因子、またその性差を解明することを目的としている。
平成26年度は、鉛曝露の中枢神経系への影響を解明するに先立ち、アストロサイトのカルシウムイオン応答への影響を検討した。ラット由来の海馬アストロサイトを培養し、酢酸鉛を濃度 0, 0.5, 1, 2.5, 10, 50 および 100 μMとなるように培地に添加して、1日曝露させた。その後、蛍光顕微鏡にて細胞内カルシウムイオン濃度の変化を観察した。
高濃度 KCl刺激による強制的脱分極後のカルシウムイオンの応答は、コントロールと比較して鉛濃度 0.5と 1μMでは差が認められなかった。鉛濃度 2.5, 10 および 50 μMではコントロールに比べて顕著な低下が見られたが、100 μMではカルシウムイオン応答自体が確認されなかった。鉛濃度 2.5 μM以上では濃度依存的にカルシウムイオン応答が低下する傾向が確認され、応答の速度がコントロールと比べて遅くなる傾向が見られた。本結果より、鉛がアストロサイトのカルシウムイオン応答に影響することが示唆された。 現在、神経伝達物質であるD-セリンを中心とした遊離アミノ酸の濃度を測定するために基礎検討を行っている。今後は、生体内において変化が観察されるかどうか検討を行っていく。
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