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2014 年度 実施状況報告書

ヒ素によるコレステロール代謝異常誘発メカニズムの解明

研究課題

研究課題/領域番号 26860445
研究機関東京慈恵会医科大学

研究代表者

内匠 正太  東京慈恵会医科大学, 医学部, 助教 (80570770)

研究期間 (年度) 2014-04-01 – 2017-03-31
キーワードヒ素 / コレステロール / トランスポーター
研究実績の概要

無機ヒ素(ヒ素)による地下水汚染は、東南アジアをはじめ世界各地で様々な健康被害を引き起こすことが報告されている。近年、ヒ素曝露によるアテローム性動脈硬化症などの循環器疾患の発症リスクが増大することが報告されているが、その発症メカニズムについては未だ不明な点が多い。そこで、本研究ではコレステロール代謝の主要な臓器である肝臓に着目し、ヒ素がオキシステロールや胆汁酸をリガンドに持つRetinoid X Receptor (RXR) 結合型の核内受容体Liver X Receptor (LXR)及びFarnesoid X Receptor (FXR) に与える影響について詳細に解析し、ヒ素曝露によるコレステロール代謝異常のメカニズムを明らかにすることを目的とする。
これまでの解析の結果、マウス肝臓由来のHepa1c1c7細胞にヒ素を曝露すると、LXRの標的遺伝子であるAbca1の有意な発現抑制が遺伝子レベルで認められた。また、ヒ素曝露後の細胞内総コレステロール量を測定したところ、対照群に比べ有意な増加が認められた。このことから、ヒ素曝露による細胞内コレステロールの蓄積が示唆されたが、Abca1の遺伝子レバルでの発現抑制が、実際にコレステロールの蓄積に関与するかは未だ不明である。今後、ヒ素曝露による細胞内コレステロールの蓄積にAbca1の発現抑制が関与するのか、または、その他のメカニズムにより細胞内コレステロールの蓄積が引き起こされているのか詳細に解析を行う予定である。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

当初予定していたAbca1の発現を強く誘導すると考えていたLXRのリガンドである22 (R)-hydroxycholesterolやLXRのアゴニストであるT09017によるAbca1の顕著な発現誘導が遺伝子レベルでは認められず、予定していたヒ素曝露によるAbca1の発現誘導阻害のメカニズムの解析が行えなかった。そこで、先に細胞内コレステロールの測定を行ったところ、ヒ素曝露により細胞内の総コレステロールが対照群に比べ有意に増加することが明らかになった。このことから、当初の予定とは若干異なったが、ヒ素曝露によるコレステロールの代謝異常が認められたので、今後は見出した条件における分子機序について詳細に解析する予定である。

今後の研究の推進方策

平成26年度までの検討でヒ素曝露によるコレステロールの代謝異常が認められ、ヒ素曝露により細胞内の総コレステロールが増加することが明らかになった。そこで、平成27年度はヒ素曝露による細胞内の総コレステロールの増加が認められた条件で、ヒ素がどの様なメカニズムによりコレステロールの蓄積を引き起こすのか、以下の解析を行う予定である。
1)コレステロール代謝関連遺伝子の発現解析:Abca1をはじめとしたコレステロール代謝関連遺伝子 (Bsep, Mrp2等) の遺伝子発現解析及びウエスタンブロットによる発現解析を行う。
2)LXR/RXR及びFXR/RXR転写経路の解析:1)で転写抑制が認められた条件で、ヒ素がLXR、FXR及びRXRに及ぼす影響についてタンパクレベルでの発現解析を行う。また、核内受容体とリガンド応答配列の結合状態やヒストン修飾の状態を、クロマチン免疫沈降法により解析する。
3)核内受容体内の亜鉛濃度測定:2)の結果、ヒ素曝露によりリガンド応答配列への結合能が低下した場合、Znフィンガードメインへのヒ素の結合が推測される。そこで、Znフィンガードメインへのヒ素の結合による亜鉛の乖離を確認する目的で、抗体を用いた免疫沈降法により核内受容体を精製し、核内受容体内の亜鉛含量をELISA法又は機器分析により測定する。内在性の核内受容体の精製が困難な場合、タグ標識した核内受容体を人為的に導入し検討を行う。
4)亜鉛によるヒ素毒性抑制効果の検討:コレステロール代謝関連遺伝子の発現抑制にZnフィンガードメインへのヒ素の結合が関与する場合、亜鉛添加によりヒ素の影響を抑制できると推測される。そこで、ヒ素による発現抑制が認められた代謝関連遺伝子の発現が、亜鉛添加により回復するか否か検討を行う。以上の結果を基に、ヒ素がコレステロール代謝にどの様なメカニズムにより影響を及ぼすかを明らかにする。

次年度使用額が生じた理由

当初の予定より研究がやや遅れているため、必要な抗体の購入が遅れた。

次年度使用額の使用計画

次年度使用額は当初購入予定でった抗体の購入に使用する。

  • 研究成果

    (3件)

すべて 2015 2014

すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (1件)

  • [雑誌論文] Naringin attenuates the cytotoxicity of hepatotoxin microcystin-LR by the curious mechanisms to OATP1B1- and OATP1B3-expressing cells.2015

    • 著者名/発表者名
      Takumi S, Ikema S, Hanyu T, Shima Y, Kurimoto T, Shiozaki K, Sugiyama Y, Park HD, Ando S, Furukawa T, Komatsu M.
    • 雑誌名

      Environmental toxicology and pharmacology

      巻: 39 ページ: 974-981

    • DOI

      10.1016/j.etap.2015.02.021.

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Microcystin-LR induces anoikis resistance to the hepatocyte uptake transporter OATP1B3-expressing cell lines.2014

    • 著者名/発表者名
      Takano H, Takumi S, Ikema S, Mizoue N, Hotta Y, Shiozaki K, Sugiyama Y, Furukawa T, Komatsu M.
    • 雑誌名

      Toxicology

      巻: 326 ページ: 53-61

    • DOI

      10.1016/j.tox.2014.10.003.

    • 査読あり
  • [学会発表] Gestational Arsenic Exposure Affects Gene Expression in the Kidney and Lung in the F1 and F2 Mice2015

    • 著者名/発表者名
      Takumi S, Okamura K, Suzuki T, Hano H, Nohara K
    • 学会等名
      The 54th Annual Meeting of the Society of Toxicology
    • 発表場所
      米国, サンディエゴ, コンベンションセンター
    • 年月日
      2015-03-22 – 2015-03-26

URL: 

公開日: 2016-06-01  

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