研究実績の概要 |
本研究は、住民による地区組織活動(保健補導員活動等)に着目して、地域のソーシャル・キャピタルと健康の関連について明らかにする疫学研究である。 平成29年度は主に、長野県S市において実施した調査結果の追加分析を実施した。S市では平成26年に、65歳以上の住民13,846名を対象として、保健補導員活動に着目した質問票調査を実施した(回収率77.7%)。調査の結果について、これまでは、保健補導員の経験の有無による女性の健康状態の違いを検証してきた。平成29年度は、保健補導員の経験による、男性家族への健康との関連を検証した結果についての精査を行った。分析の結果、同じ既婚男性においても、世帯内に保健補導員を経験した女性がいると、抑うつ傾向が少ないという関連がみられた。この内容について、論文作成を実施した。 また、福島県K市では、保健所が主体となって、地区組織活動の育成に関わる検討会を平成26年度から実施しており、検討会にアドバイザーとして参加している。平成29年度は、食生活改善推進員が自主活動を行うための方法や資料をまとめた手引きを作成・配布した。さらに、地区の推進員活動の現状や課題について検討し、今後、推進員が地域のソーシャル・キャピタルを醸成しながら健康づくりを推進するために必要な事項を整理した。 さらに、地区組織活動の成果を評価する手法について情報収集をするため、アメリカで開催された10th Annual Conference on the Science of Dissemination and Implementation in Health(健康分野における普及と実装の科学に関する学術会議)に参加した。
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