研究課題
過去の公害と比較して現代の化学物質による人体汚染は相対的に低濃度曝露であること、並びに近年の原因不明なアレルギー疾患患者数の増加傾向より、アレルギー誘発・増悪物質に焦点を絞り、その作用を有する環境・食品汚染物質の探索と免疫毒性影響に関する研究を遂行していくことが喫緊の課題であると確信される。従って、本研究では、食事を介して非意図的に摂取した化学物質の第一次汚染部位であり、腸管粘膜特有の生体防御システムである腸管粘膜上皮組織に着目し、簡便・迅速かつ高感度なin vitroハイブリッド式検出法の開発、並びにアレルギー誘発・増悪物質の探索とその免疫毒性を評価するものである。平成26年度では、ハイブリッド式検出法の構築の為の基礎データーとして、モデル抗原を用いたTh1及びTh2応答性の検討とモデル抗原の低分子化を目指した。その結果、モデル抗原として汎用されているOVAでヒトTリンパ球を刺激すると、Th1系サイトカイン(IFN-g、IL-2) 及びTh2系サイトカイン (IL-4、IL-10) のmRNA量が上昇することを見出した。また、OVAのエピトープ部分を保存した低分子化ペプチドを作製することができた。さらに、OVAが胃液や膵液に含まれるペプチターゼにより、10 kDa前後のペプチドに分解されることを見出した。平成27年度は前年度の結果を精査し、低分子モデル抗原を用い、バリア機能及び免疫賦活化能を同時に評価可能なハイブリッド式検出法の構築を目指す。
2: おおむね順調に進展している
本年度では、Th1及びTh2の正確な判定を可能とする、高感度かつ安価なin vitro免疫賦活化能評価系の構築までが研究計画である。免疫賦活化能をin vitroにおいて評価する系の構築には、概ね終了した。現在、健康有害化学物質による免疫攪乱作用を検討すると共に、低分子化モデル抗原を用いて評価しており、ハイブリッド式検出法の反応性の向上を試みている。
前年度までに、本課題のkeyとなるin vitroにおける免疫賦活化能を評価する実験系構築の為の基礎的データーの収集及び低分子化モデル抗原の作製が完了した。本年度では、その成果を精査し、より高感度かつ安価なin vitro免疫賦活化能評価系の構築とin vitroハイブリッド式検出法の妥当性評価を、下記の項目①~③について実施する。① 低分子化モデル抗原を用いたTh1及びTh2応答性の評価を行う。② in vitroにおける健康有害化学物質による免疫攪乱作用の評価を行う。③ ②において免疫攪乱作用が認められた化学物質について、バリア機能破綻能の評価とin vivoにおける免疫攪乱作用を評価する。
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Chemical Research in Toxicology
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Toxicology
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