| 研究課題/領域番号 |
26860448
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| 研究機関 | 産業医科大学 |
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研究代表者 |
井上 彰臣 産業医科大学, 産業生態科学研究所, 助教 (70619767)
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| 研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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| キーワード | 組織的公正 / ソーシャル・キャピタル / メンタルヘルス / 生理指標 / ヒヤリ・ハット / 事故 / 前向きコホート研究 / 産業保健 |
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| 研究実績の概要 |
本研究では，職場における組織的公正（手続き的公正，相互作用的公正）やソーシャル・キャピタル等の組織要因が，従業員の衛生面（精神的健康指標および高血圧や脂質異常症等の虚血性心疾患と関連する身体的健康指標）や安全面（ヒヤリ・ハット［インシデント］や事故［アクシデント］）に与える影響を明らかにすることを目的として，2年間の前向きコホート研究を実施している。研究期間1年目である今年度は，社会医療法人に勤務する病院・診療所職員600名（男性133名，女性467名）を対象にベースライン調査を実施した。
その結果，手続き的公正，相互作用的公正およびソーシャル・キャピタルが低いほど，心理的ストレス相当（K6得点≧5点と定義）および重症精神障害相当（K6得点≧13点と定義）の精神的不調の有所見率が有意に高かった。身体的健康指標との関連については，相互作用的公正が低いほど，低HDLコレステロール血症（40［mg/dL］未満と定義）の有所見率が有意に高く，また有意傾向ではあるが，ソーシャル・キャピタルが低いほど，低HDLコレステロール血症の有所見率が高かった。
安全面との関連については，病院に勤務する職員347名（男性133名，女性214名）に対象を限定して解析を行い，相互作用的公正およびソーシャル・キャピタルが低いほど，過去12ヵ月以内のヒヤリ・ハットの発生率が有意に低いという，予想とは異なる知見が得られた。ヒヤリ・ハットや事故の発生データは自己申告に基づいて記録されているため，上司による公正な態度や職場の一体感が損なわれた環境下では，ヒヤリ・ハットの発生を報告・共有しにくい可能性が考えられた。今後，調査対象事業場へのヒアリング等を通して，実態を明らかにする必要がある。
本研究の結果は，あくまでも横断データによる知見であるため，来年度，縦断的な検討を行うためのフォローアップ調査を実施する予定である。
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| 現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度の研究計画で予定していた，ベースライン調査に関する一連の計画（調査対象事業場の選定，予備調査，本調査の準備・実施，データ入力・解析，個人・職場への結果返却）を滞りなく遂行し，横断データによる解析ではあるが，本研究の目的（職場における組織的公正やソーシャル・キャピタルが損なわれた状態が，従業員の精神的健康や各種生理指標［血圧，コレステロール，中性脂肪等］の悪化，ヒヤリ・ハット［インシデント］や事故［アクシデント］の発生率の増加に影響を及ぼすことを明らかにすること）に対する結果を見出すことができたことから，おおむね順調に進展していると考えられる。一方で，ヒヤリ・ハットや事故との関連については，その具体的内容やレベル区分別の検討ができていないこと，また，研究概要で示した通り，予想とは異なる知見が得られたことから，今後，より詳細な検討を行っていく必要がある。
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| 今後の研究の推進方策 |
１．調査継続の確認（平成27年4～5月）：調査対象事業場の担当者に対し，調査継続の可否を確認する。継続可能な場合，新入職員を調査対象に含めるか，また，調査票の内容で加筆・修正が必要な箇所がないかについて，事業場の希望を確認する。
２．調査票の加筆・修正（平成27年6～7月）：調査対象事業場から，調査票の内容について加筆・修正の希望があった場合，その希望に応じて加筆・修正を行い，フォローアップ調査で使用する調査票の最終版を作成する。
３．フォローアップ調査の準備（平成27年8月）：対象者に配付する説明文書・同意書（新規参加者のみ）・調査票・返信用封筒を作成する。
４．フォローアップ調査の実施（平成27年9～10月）：健康診断の約2週間前に説明文書・同意書・調査票・返信用封筒を配付し，健康診断時までに記入を依頼する。健康診断時に，返信用封筒に厳封された同意書（新規参加者のみ）・調査票を回収し，血圧測定・血液検査を実施する。
５．データ入力・解析・結果返却・研究成果報告（平成27年11月～平成28年3月）：フォローアップ調査終了後，データ入力，クリーニング，および，統計解析を行う。調査対象事業場の要望に応じ，個人・職場への結果返却を行う。同時にベースラインデータとフォローアップデータを統合してパネルデータを作成し，国内外の学会で研究成果を発表するとともに，国際英文誌に論文を投稿する。
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