研究課題
本研究では,職場における組織的公正(手続き的公正,相互作用的公正)やソーシャル・キャピタルなどの組織要因が,労働者の衛生面(精神的健康指標,虚血性心疾患の危険因子となる身体的健康指標)と安全面(ヒヤリ・ハット,事故)に与える影響を明らかにすることを目的として,2年間の前向きコホート研究を実施している。研究期間3年目である今年度は,社会医療法人に勤務する病院・診療所職員394名(男性86名,女性308名)を対象に2回目のフォローアップ調査を実施した(追跡率:66%)。その結果,ベースライン時の手続き的公正,相互作用的公正,ソーシャル・キャピタルが低いほど,2年後の心理的ストレス相当(K6得点≧5点)および重症精神障害相当(K6得点≧13点)の精神的不調の有所見率が有意に高かったが,これらの関連は,ベースライン時のK6得点を調整後,有意ではなくなった。身体的健康指標との関連については,ベースライン時の手続き的公正,相互作用的公正,ソーシャル・キャピタルと,2年後の高血圧,高LDLコレステロール血症,低HDLコレステロール血症,高トリグリセリド血症との間に有意な関連は認められなかった。安全面との関連については,病院に勤務する職員220名(男性65名,女性155名)に対象を限定して解析を行ったが,ベースライン時の手続き的公正,相互作用的公正,ソーシャル・キャピタルと,その後2年間のヒヤリ・ハットおよび事故の発生との間に有意な関連は認められなかった。本研究は今年度の調査で終了となるが,調査対象者の多くが離職率の高い看護職であり,十分な追跡率を確保することが難しかったこと,他の業種への一般化が困難であることなどが限界点として挙げられる。今後,製造業や建設業など,ヒヤリ・ハットや事故が発生しやすい他の業種の労働者を対象に,十分な追跡率を確保しながら,より長期的な検討を行う必要がある。
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すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (7件) (うち国際共著 1件、 査読あり 4件、 謝辞記載あり 3件、 オープンアクセス 3件) 学会発表 (4件) (うち国際学会 2件)
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