本研究は、作業環境測定において固体捕集法で使用される脱着溶液について、有機溶媒よりも曝露リスクの低い、界面活性剤を使用した活性炭からの有機溶剤脱着法を開発することを目的とした。具体的な検討項目は、1.脱着溶液に使用する界面活性剤の検討、2.脱着溶液中の界面活性剤濃度と脱着工程の検討、3.固体捕集法が適用される作業環境測定対象物質の中で、精度よく分析することができる有機溶剤の特定、4.混合有機溶剤を吸着している活性炭に対する脱着特性の4つである。平成26年度および27年度では、1、2および3について検討を行い、脱着溶液に使用する界面活性剤とその濃度、および脱着工程を決定した。また、7物質であるが精度よく分析可能であるかを調べたが、脱着率のばらつきが大きく、また脱着率が低い物質が多かった。そのため平成28年度は、脱着率のばらつきを小さくすることと脱着率を向上させるため、前述の検討項目にはないが、使用する活性炭の検討と界面活性剤の効果を向上させるために脱着溶液に添加する助剤(ビルダー)の検討を行った。 使用する活性炭の検討ついて、界面活性剤溶液を用いた脱着率は、ヤシ殻活性炭では製造ロットにより値の変動が大きく、球状活性炭では製造ロットによる脱着率の変動は小さかった。 ビルダーの検討では、クエン酸を脱着溶液に添加することにより、メチルエチルケトンにおいて添加しない場合よりも脱着率が向上した。また、この時脱着溶液のpHが低いほど脱着率が向上する結果も得られた。 これらの結果から、界面活性剤を使用した活性炭からの有機溶剤の脱着法を完全に構築することはできなかったが、イソプロピルアルコールの脱着率は90%以上と、適応の可能を示す物質もあった。また、ビルダーの添加や脱着溶液のpHを低くすると脱着率が向上することもわかった。そのため、さらなる検討により脱着法として確立できる余地があると考えた。
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