研究実績の概要 |
大気粉塵試料中デクロラン類(syn-DechloranePlus, anti-DechloranePlus, Dechlorane602, Dechlorane603, Dechlorane604_ComponentA)分析を行うための前処理の検討を行った。大気粉塵試料に対しジクロロメタンを加え超音波法により抽出を行い、抽出液に対しさらにシリカゲルクロマトグラフィーおよび硫酸含有シリカゲルクロマトグラフィーによる精製を行ったものを濃縮し測定条件を最適化したガスクロマトグラフ高分解能質量分析計で分析を行った。添加回収試験を3併行で行った結果、回収率は92~113%であった。尚、回収率の算出するにあたりsyn-Dechlorane Plusおよびanti-DechloranePlusについては対応する13C置換安定同位体により、その他のデクロラン類はsyn-DechloranePlusの13C置換安定同位体による補正を行った。このことから今回確立した前処理方法が今回対象としたデクロラン類の分析において有効であることが確認できた。この方法を持ちいて大阪においてハイボリュームエアーサンプラーを使用し石英繊維フィルターに捕集した大気粉塵を分析した。その結果、syn-DechloranePlusおよびanti-DechloranePlusが合計で7~15pg/m3の濃度で検出され、それ以外のデクロラン類は検出されなかった。syn-DechloranePlusとanti-DechloranePlusの濃度合計でanti-DechloranePlus濃度を除したfanti比は、0.64-0.78であり工業製品中のそれに近い値となった。今後、日本およびアジアの他都市で捕集した大気粉塵試料の分析、粒径別に採集した大気粉塵の分析などを行い大気中のデクロラン類の挙動を明らかにする予定である。
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