研究実績の概要 |
昨年度までに得られた知見を発展し下記の成果を得た。 【健常人血清の持つ中和抗体の市中流行株に対する交差反応性の検討】初年度に樹立した中和抗体測定系にて同一検体を複数回測定した際の、Genotype 1a, 1E, 2Bに対する幾何平均中和抗体価と95%信頼区間は、10.6 [7.6-13.5], 9.8 [6.5-13.2], 13.0 [10.2-15.8]であった(n=10)。Genotype 1aに対する中和抗体価とIgG抗体価にROC曲線解析を適応したところ、IgG抗体価10IU/mLは中和抗体価1:8に相当した(n=101)。中和抗体価1:8をカットオフ値とした際のGenotype 1a, 1E, 2Bに対する中和抗体保有率は、85.2%, 73.3%, 50.5%であり、Genotype 2Bに対する中和抗体保有率は、1a, 1Eに比べて有意に低かった(P<0.002, Fisher's exact analysis)。 【RV複製制御因子の同定と複製制御メカニズムの解析】胎盤絨毛癌由来培養細胞におけるRV持続感染モデルを樹立し、非感染細胞と比較し発現が増強される遺伝子群の中からIFN-lambda 2(IFNL2)に着目した。IFNL2は、ヒト神経膠腫由来細胞U251にてRV複製を87~98%抑制したが、ヒト胎盤絨毛癌由来のJarやJeg3細胞においてRV複製を殆ど抑制しなかった。IFNL2は、IFNL受容体に認識されISG56, OAS1, PKR等の発現を誘導する。U251細胞においてIFNL2はこれらを3.6~44.1倍誘導したが、IFNL2はJar細胞で殆ど誘導しなかった。Jar細胞のIFNL受容体の発現は、U251細胞と比較すると0.08~0.17倍と低かった。ヒト胎盤組織におけるIFN-LR1の発現も、その他のヒト組織と比較し低かった。
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