日本の救急は人手不足であり、非救急医に頼っている。そのため、救急診療の正確な評価が行えていないという問題点を抱えている。救急診療のような医療の入り口の質の評価は医学の高度化により、死亡のようなハードアウトカムのみでは困難になってきた。近年、Quality Indicator(質指標)として、救急診療の質を時間というプロセスで測り、評価する方法が用いられ始めた。しかし、その様な指標が示されている疾患はまだ心筋梗塞などのごく限られた疾患である。申請者らは救急における患者の流れ(patients flow)を時間軸でとらえ、救急医療の質の評価に用いる方法を考えた。 本研究は救急外来受診患者の診療時間を評価する単施設の前向き観察研究である。一年間に当該施設の救急外来に救急車で搬送される全成人患者を対象とした。そして、対象者の診療における時間経過(受付から検査、治療、入院など)の情報を測定・記録できるモニターに1年間データを蓄積した。これらの作業を行うことで、スタッフは救急における時間因子の重要視することができるようになった。また、効率的な仕事の方法を考慮するようになった。一方で忙しい救急外来の中で時間因子を記録、コントロールしていく困難さも発見できた。これらの時間経過が患者の長期予後や患者満足度に影響があると思われる。我々はこれらを用いて、救急医学はアウトカムよりもプロセスを重視するプロセス学である考え方を広げることができた。今後はこれらの経験とデータを用い、救急医療の質に関連する具体的な時間因子を模索する基礎ができた。
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