研究課題/領域番号 |
26860460
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研究機関 | 広島国際大学 |
研究代表者 |
早川 佐知子 広島国際大学, 公私立大学の部局等, 講師 (90530072)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 看護補助者 / Nurse Practitioner / 派遣看護師 / アメリカ |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、多様な看護職種、とりわけ看護補助者を用いた人事労務管理制度を構築することにより、看護師不足を解消する可能性を検討することである。 2年目に当たる2015年度は、当初の予定通り、アメリカにおけるインタビュー調査を中心に据えて実行した。2015年9月に、ネブラスカ州オマハにて、ネブラスカ医科大学付属病院のさまざまな施設、および、地域の医療センターにおいて、各看護職種の役割分担に関する聞き取りを行うことができた。特に、Nurse Practitioner(NP)の活躍が目覚ましく、医師と遜色ない職務を担当していることが明らかになった。 これと同時に、看護補助職は、医療施設によって呼称がさまざまであり、事務的な職務の割合が多いタイプから、看護的な職務の割合が多いタイプまで幅広く存在することがわかった。このため、分析を行う際には、ひとくくりにすることなく、資格の有無や職務内容などを丁寧に見ることが欠かせないであろう。 また、外部労働者である、派遣看護師の活用についても、本研究のひとつの課題であったが、ネブラスカ医科大学附属病院においては、救急救命部門での活用方法を聴くことができた。派遣看護師は、デスクワーク以外の職務については、正規雇用の看護師とほぼ同等の職務を任されているものの、精神疾患の患者等、訴訟につながるおそれのある患者のケアについては、原則として除外するとのことであった。このことは、派遣看護師の職務を分析する際に、ひとつの大きなポイントになると考えられる。 この調査において得た知見を中心として、2015年12月に、日本医療経済学会学術集会において、報告を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
計画通り、アメリカでの現地調査を実施できたことが、最も大きな理由である。こちらは、ネブラスカ医科大学看護学部の大きなバックアップを得ることができたおかげで、救急救命室から精神科クリニック、そして、日本ではあまり見ることのできないエイズクリニックや、地域の貧困層のためのヘルスセンターに至るまで、非常に幅広い看護の現場を見ることができた。また、ネブラスカ医科大学看護学部での養成の様子も見ることができ、収穫が大きかったと感じている。 文献研究に関しては、オレゴン州のNurses Associationが組織化している、40余りの急性期病院の労働協約を用いて、それぞれの看護職種に関して、どのような規約が定められているのかという分析に時間を割いた。ネブラスカ州のように、労働組合のパワーが強くない州もあるが、東西両海岸沿いの州については、組織化率が高いため、この手法を用いた分析が非常に有効であることが明らかになった点も、大きな収穫の一つである。 以上のように、現地調査と文献調査を同時に滞りなく進めることができたため、おおむね順調であると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度に当たる2016年度は、再度、現地にてインタビュー調査を実施したい。なぜなら、2015年度の現地調査で得た知見が予想以上に大きなものであったため、さらに調査を重ねることの有効性を実感したためである。 特に2016年度に重点を置きたいと考えているのは、看護補助者についての調査である。これについて意義があるであろう訪問先は、看護補助職を組織化していることの多い、Service Employee International Union(SEIU)である。オレゴン州のSEIUが組織化している病院の労働協約を入手して調べたところ、昇給のための賃金テーブルなどもきちんと定められており、不熟練職種といえども、労使関係を確かにすることで、スキルアップの可能性が開かれることが明らかになった。このため、組織化の方法や方針について、SEIU関係者にインタビュー調査を行いたい。 また、派遣看護師については、テキサス州ダラスにある、医療専門職派遣会社に調査を依頼済みである。これまで、労働者側、および、使用者側である病院へのインタビューは実施してきたが、派遣元となる企業については不明瞭な部分が多かった。この調査を行うことにより、3つ目の主体がどのように機能しているのかを明らかにすることができ、研究が大きく前進するものと期待している。 そして、最終年度であることから、全体の総括となりうる論文を、秋から冬にかけて執筆することが、最期の大きな課題となるであろう。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額が生じた理由は、下記の通りである。 第一に、予定していた人件費を使用しなかったことである。本研究の場合、英語資料が中心となるが、一定程度英語力のある人材を、臨時雇用として見つけることが困難であったことが大きい。第二に、2回実施するはずであった海外調査を、1回しか実施しなかったためである。
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次年度使用額の使用計画 |
前述のように、2016年度は、海外での調査を複数回行いたいと考えている。未消化であった予算の大部分については、これによって消化できるであろう。
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