研究課題
頭部外傷において頭蓋骨骨折を認める場合は、認めない場合と比較して致死的な頭蓋内病変を合併する頻度が有意に高いという報告がある。物体の強度の測定する実験は法医学領域では稀であるが、骨折に関する研究は実務の面において極めて実用的であると言える。今回の研究目的は2点である。1つ目は成人の頭蓋骨を用いて、縫合部の脆弱性の有無を明らかにし、頭蓋骨骨折を調査する上で加わった外力を予想することにより、犯罪捜査の幅を広げることができるようにする。平成26年度の研究の結果、頭蓋骨の矢状縫合はその周囲の縫合がない部と比較して有意に割れやすいことを示した。また、矢状縫合の部位によっては強度と年齢との相関関係に性差があることも示した。これらの結果をまとめ、国内の学会で発表した後、英文論文を執筆し、査読のある国際誌に受理された。平成27年度は成人の頭蓋骨の更なる研究をするために新たな部位の試料を採取していく予定である。2つ目は小児の頭蓋骨を用いて、頭蓋骨の生理的発達及び年齢別の強度を明らかにし、頭蓋骨骨折の評価を正確にできるようにすることで、小児虐待の安易な見逃しを減らす。しかし平成26年度に採取できた試料の数は予想よりも少なかった。小児の場合は生理的成長があるため、症例数を多くして年齢別に区分することが評価する上で非常に重要である。平成27年度も試料収集を継続し、充分な症例数が集まった後、結果を分析し、学会発表及び論文執筆をしていく予定である。
1: 当初の計画以上に進展している
研究目的の1つ目である成人の頭蓋骨の矢状縫合の強度に関する研究については、本来であれば2年間かけて試料を採取し、結果をまとめて学会発表し、更に論文執筆をして国際誌に投稿するところ、1年間で国際誌に受理されるところまで達成した。よって研究の1つ目は終了した。研究目的の2つ目である小児の頭蓋骨の強度に関する研究については、若干症例数は少なめではあるが集めている最中である。
今後は小児の研究を進める。具体的には試料の採取を終わらせ、統計学的分析をし、学会発表あるいは論文執筆及び投稿を行う予定である。
必要なものは概ね購入した。僅かな金額が残った。
平成27年度の研究に必要なものを購入し、最終的に使い切る予定である。
すべて 2015 2014
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (1件)
Forensic Science International
巻: 249 ページ: 101-106
10.1016/j.forsciint.2015.01.030