臨床的に家族性地中海熱(FMF)が疑われた症例に対し、MEFV遺伝子検査を行った。平成28年度は1年間で131件の検査を行い多くの患者の診断、治療に貢献することができた。 最終年度に実施した研究の一つとして発症年齢についての検討を行った。小児期から若年での発症が多い疾患であるが、しばしば中年期以降の発症例を経験するため、その臨床的特徴について検討を行った。発症年齢によって3つの群に分け、臨床症状やMEFV遺伝子変異について検討したところ、発作回数や発熱の頻度は同程度だったが、腹膜炎や胸膜炎の頻度は若年発症例に比べて40歳以上の発症例で低かった。また、MEFV遺伝子変異保有率、特にexon10のp.Met694Ile保有率は40歳以上の発症群で最も低かった。一方でコルヒチンの必要量、有効性には差がなかった。本邦では中年期以降にFMFを発症する患者が一定数存在することが分かり、遺伝子変異の陽性率や漿膜炎の頻度は若年発症例に比べ低いものの、短期間で収束する周期熱という特徴的なパターンの熱型に着目することで診断が可能であると考えられた。この成果は第61回日本リウマチ学会総会で報告した。 研究期間全体を通しては339例の遺伝子検査を行ったが、本研究の成果もあって全国の多施設から検査の依頼が年々増加した。本邦では極めて稀な疾患と認識されていたFMFであるが、今や原因不明の発熱を見た際の鑑別の一つに挙げられるまでになった。特に本邦FMFの表現型と遺伝型の関連についての報告(Kishida et al; Arthritis Res Ther. 2014 Sep 27;16(5):439)は、その後の研究の発展において非常に有用であったと考えられる。
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