本研究の目的は慢性閉塞性肺疾患(COPD)の労作時呼吸困難のメカニズムを解明し、その対策と治療法を開発することである。これまで申請者は補完代替医療の観点からCOPD患者の労作時呼吸困難の軽減を目的に伝統医学の一つである鍼治療を用いて呼吸困難の軽減が得られることを報告しており、特定の経穴への鍼刺激には呼吸困難を軽減させる効果があると考えている。また、呼吸リズムの生成には幾つかの領域が存在しているが、parafacial respiratory group (pFRG)やponsなどが上げられているが、延髄腹側に存在してるBotzinger complex(BotC)およびpre-Botzinger complex(preBotC)が重要な役割を担っている。 そのため、本研究では2つの研究手法においてBotCおよびpreBotCの機能を明らかにするために実験を実施した。1つめの研究としてin vivoにて、これらの領域の活動電位を取るためにガラス電極を挿入しニューロンの活動を記録した。しかし、これらの領域が延髄腹側に存在しているため実験手技面において難易度が高く、研究期間内にニューロンの活動電位を得ることが困難であった。そのため、同時進行で2つめの研究を実施しており、呼吸負荷時(CO2負荷)に鍼刺激を行いこの領域の活動を神経伝達節物質(サブスタンスP、セロトニンおよびドーパミン)の動態を解明するために高速液体クロマトグラフィー法にて観察を行った。その結果、一定の成果を得るに至った。一方、当初予定をしていたサブスタンスPの解析に関しては、微量であったためか今回の実験系では同定が困難であった。
|