研究課題/領域番号 |
26860487
|
研究機関 | 久留米大学 |
研究代表者 |
酒井 和子 久留米大学, 医学部, 助教 (90597387)
|
研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2016-03-31
|
キーワード | 透析 / 加齢男性更年期症候群 / カルニチン / アルツハイマー型認知症 |
研究実績の概要 |
慢性血液透析患者にけるlate-onset hypogonadism (LOH)症候群、動脈硬化進展やアルツハイマー型認知症に対するカルニチン投与による抑制効果を検証する事を目的とする。慢性血液透析患者における血清カルニチンレベルの著明な低下はLOH症候群の程度やテストステロンレベル、動脈硬化の発症進展因子としての終末糖化産物(AGEs)の蓄積と関与する可能性があることを我々は報告してきた。男性血液透析患者に対するカルニチン補充療法は透析由来LOH症候群、鬱病、認知機能低下(アルツハイマー型認知症)、動脈硬化進展に対する新規アプローチとして、透析患者のQOL改善に寄与できる可能性がある。 近年、LOH(加齢男性更年期)症候群は死亡率やQOL低下、動脈硬化発症に関与することが報告されている。我々はLOH症候群を呈する男性血液透析患者(低テストステロン血症)において、[遊離テストステロンレベル健常者(9.50 ±3.67pg/ml)vs血液透析患者(4.67 ±2.69pg/ml)]、遊離テストステロンレベルが、血清カルニチンレベルと有意に正相関することを見出した(Sakai, Fukami et al. Rejuvenation Res 2013)。血液透析患者では血液中の60-70%のカルニチンがダイアライザ―を介して血液透析にて喪失するため、98%の血液透析患者はカルニチン欠乏状態であり、カルニチン欠乏状態が遊離テストステロン低下と関与していること、カルニチンは精巣上体で産生され、精子の運動機能の維持に必須であることなどから、透析患者におけるカルニチン欠乏がLOH症候群や動脈硬化発症の一端となっている可能性があるとして現在検討を行っている。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
A)男性血液透析患者におけるLOH症候群、鬱病とカルニチン欠乏との関連を、採血結果とアンケートを用いて明らかにする。→終了 B)L-カルニチンを投与により動脈硬化の指標であるIMT、pulsatility index(頸動脈硬化指標)pulse wave velosity (PWV)の進展が経年的に抑制されるかを検討する。→未 C)血液透析患者においてカルニチン内服投与がTMAOを上昇させ動脈硬化進展に寄与するか否か、そうであれば静注投与にて動脈硬化進展が軽減されるかを明らかにする。具体的には男性透析患者を経口群(L-カルニチン900mg/日)、静注群(1000mg/透析後)、未投与群(プラセボ群)とランダムに3群化して比較検討する。→終了 D)アルツハイマー型認知症をMMSEによる認知機能テストや脳SPECTによる画像診断にて診断し、L-カルニチン投与がそれらを改善しうるかを検討する。→未
|
今後の研究の推進方策 |
A),C)は終了し、以下の検討を引き続き行う。 B)L-カルニチンを投与により動脈硬化の指標であるIMT、pulsatility index(頸動脈硬化指標)pulse wave velosity (PWV)の進展が経年的に抑制されるかを検討する。 D)アルツハイマー型認知症をMMSEによる認知機能テストや脳SPECTによる画像診断にて診断し、L-カルニチン投与がそれらを改善しうるかを検討する。さらに、カルニチン欠乏モデルマウスを5/6腎摘することにより腎不全を作成し、透析患者モデルに対するL-カルニチン投与が認知機能、心肥大、酸化ストレスに与える影響を検討する。
|