研究課題
本研究期間では、まず、メタボリックシンドロームの発症の中心的な役割を担うインスリン抵抗性が骨粗鬆症におよぼす影響を検討することとし、都市部在住の一般住民を対象としたコホート研究である神戸研究の登録時データによる断面研究を行った。全解析対象者をインスリン抵抗性の指標であるHOMA-IRにより男性(293名)・閉経前女性(164名)・閉経後女性(536名)別に3分位で3群(低値群・正常群・高値群)に分類した。その上でHOMA-IR群と骨密度(超音波法による踵骨の音響的骨評価値)の関連を単変量・多変量解析にて検討した。その結果、男性および閉経後女性では、単変量解析でHOMA-IR高値群と骨密度に有意な正の関連を認めたが、BMIを含む多変量調整後にその関連が消失した。また、閉経前女性ではHOMA-IRと骨密度に有意な関連を認めなかった。したがって、インスリン抵抗性はBMIと独立して骨密度と関連しないことが示された。次に、女性における若年期ならびに中高年期のやせと骨密度の関連を神戸研究の登録時データを用いて検討した。解析対象は中高年期(40-74歳)の女性749名とした。20歳時のBMIを調査時に聴取した20歳時の体重と調査時の身長から推定し、20歳時のBMIが18.5未満の場合に若年期のやせと定義した。全対象者を若年期と中高年期のやせの有無により計4群に分類し、若年期・中高年期ともにやせでない群を対照として、他群の骨密度低値(Tスコア-1SD未満)となるリスクを、多変量ロジスティック回帰分析により検討した。その結果、若年期・中高年期ともにやせ、ならびに中高年期のみのやせでは、骨密度低値となるリスクが有意に上昇した。一方、若年期のみの痩せでは、骨密度低値の有意なリスク上昇は認められず、若年期にやせていても、それ以降にやせが改善すれば、中高年期の骨粗鬆症を予防できる可能性が示された。
すべて 2016
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件、 謝辞記載あり 1件)
Journal of epidemiology
巻: 26 ページ: 572-578
10.2188/jea.JE20150267