研究課題
B型肝炎ウイルス(HBV)は肝臓に持続感染して炎症やストレス、加齢、遺伝要因などが複雑に絡みながら慢性肝炎、肝硬変、肝癌へと進展する。本研究では主に細胞老化との関連に着目しウイルスの持続感染による肝病態発症の分子機序を解明することを目標として培養細胞系を用いた検討を行った。老化関連疾患への関与が指摘されている脱アセチル化酵素活性を有するサーチュイン遺伝子の発現抑制実験を行った。サーチュイン遺伝子が肝星細胞の活性化やサイトカイン産生、線維化関連遺伝子の発現レベルと関連していることが示唆された。HBV遺伝子およびタンパク発現実験の結果からHBVは肝星細胞の活性化に影響していると考えられた。染色体外性に環状DNAを自立複製することが可能な発現ベクターを用いた細胞老化の評価系を構築した。非組み込み状態におけるHBVタンパクの持続的な発現に対する細胞老化への影響について評価する上で有用な方法と考えられた。原核生物のもつRNA誘導型外来核酸分解機構であるCRISPR/Casに基づいたゲノム編集技術を用いてサーチュイン遺伝子ノックアウト細胞を作成した。RNAシークエンスの結果遺伝子ノックアウト細胞では野生型細胞と比較して特定の遺伝子セットに変動がみられ、遺伝子の機能を解明する上で重要な知見と考えられた。またサーチュインの欠損はHBV複製に影響していた。以上の検討結果からサーチュインはHBV関連肝疾患の病態に関与している可能性が示唆され、新規の治療的アプローチを考案する上で今後本検討の結果得られた知見の詳細な機序を解明していくことが必要と考えられた。
すべて 2017 2016
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 2件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (2件)
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