研究課題/領域番号 |
26860493
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
木下 裕人 東京大学, 医学部附属病院, 特任臨床医 (50645322)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 胃炎症発癌モデル |
研究実績の概要 |
本研究は、胃炎から化生性変化を経て胃腫瘍発生までの経過を解析するため、胃炎症発癌マウスモデルを新規に確立し、leneage tracingの手法を用いて、化生性変化が前癌病変であるか否かなどの検討を行うことを主目的としている。 Tff1-Creという新規に作出したCreマウスを用いて胃炎症発癌モデルを行う予定であったが(TFF1は胃表層粘液細胞特異的に発現する分泌タンパク)、交配を継続するうちにCreの発現が安定しないことが判明したため、Creマウスの作出をコンストラクト作成からやり直すこととなった。当初はTff1の上流約2.5kbをクローニングし、Tff1プロモーターCreのコンストラクトとしたが、より特異的で安定した発現を得るため、コンストラクトとしてBAC-Creを作成した(Tff1遺伝子の周辺およそ100kbを含むBACクローンを recombineerignの手法を用いて改変)。現在3匹の候補マウスを得ており、今後Rosa26-EYFPレポーターマウスとの交配によりCreの発現部位を確認する予定となっている。 本研究のもう一つの目的は、樹状細胞特異的遺伝子改変マウスを用いて、胃炎症発癌モデルを解析し、宿主の免疫学的素因が胃の炎症発癌に与える影響を検討することである。 樹状細胞特異的な変異型Kras発現マウス(CD11c-Cre x LSL-KrasG12Dマウス)を用いて検討を始めたが、同マウスは20週齢をすぎると死亡してしまうことが多く、そうしたマウスでは著明な脾腫を来しており、血液系の悪性腫瘍に関連していると思われた。同マウスを用いて胃の炎症発癌を検討するのは難しいと判断した。樹状細胞特異的IKKβ欠損マウス(CD11c-Cre x IKKβ f/fマウス)を用いて同様の検討を行う予定としている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
主たる解析ツールとする予定だったTff1-Creマウスについて、マウス作出をコンストラクト作成からやり直さなければならなかったことが、進捗が遅れている最大の理由である。コンストラクトとしてBAC-Creを用いたこともあってか、インジェクションを行っても候補マウスを1匹も得られないことが2回続き、3回目でようやく3匹の候補マウスを得ることができた。 同様に、解析予定としていたCD11c-Cre x LSL-KrasG12Dマウスについては、上述のように、胃炎症発癌などの長期の実験には適さないことが判明した。また他の解析予定としている系統(CD11c-Cre x IKKβ f/f、Foxa3-Cre、Villin-Cre)については、交配・繁殖が思うように進まず、実験を開始できていない状態である。
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今後の研究の推進方策 |
Tff1-CreマウスはBAC-Creのコンストラクトを用いた候補マウスを3匹得ており、レポーターマウスとのかけ合わせにより発現を確認した後、当初の予定通り、ヘリコバクター感染および化学発癌モデルを組み合わせて胃の炎症発癌モデルを行う予定である。また、我々のグループでは以前に変異型Her2を臓器特異的に発現させるTgマウスを作成しており(未発表データ)、Tff1-Creとの掛け合わせにより新規の胃腫瘍モデルを作成することも検討している。 CD11c-Cre x IKKβ f/fマウスは、ようやく交配・繁殖が安定してきており、まもなく実験を開始できる予定である。マウスに余裕が出てくれば、ヘリコバクター感染胃炎(発癌よりは短期での解析が可能)について、より詳細な解析を行うことも検討している。
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