研究課題
TETファミリータンパクによるメチル化シトシンからヒドロキシメチル化シトシン(5-hmC)への変換反応が報告(Tahiliani M. Science 2009, Ito S. Nature 2010)されてから、DNAの能動的脱メチル化経路が明らかとなった。我々は消化器がんを含む固形がんにおけるDNA脱メチル化経路の意義を明らかとすることを目的として、まずは脱メチル化反応の中間体でもある5-hmCが多くのヒト悪性腫瘍で減少することを明らかにして、報告したが(Kudo Y. Cancer Sci 2012、若手B課題番号24790682)、TET自体の悪性腫瘍における役割は依然として不明であった。不活性型遺伝子変異の報告がなされたTET2は血液腫瘍においてがん抑制遺伝子として知見が得られてきたが、消化器がんを含む固形腫瘍におけるTETの役割についての報告は少ない。今回我々は大腸がんを中心に消化器がんにおけるTET1の役割を検討し、まずはがん組織におけるTET1の発現量と臨床学的特徴との関係を検討した。複数のオープンアクセスな遺伝子発現マイクロアレイデータ解析の結果、TET1高発現大腸がん症例は予後不良で病期進行と関連性があるとの知見を得た。またノックダウン細胞株をもちいた検討により、TET1の抑制でがん細胞の増殖抑制、転移・浸潤能抑制、分裂異常が生じることを見出し、TET1が治療標的候補となる可能性が示唆された。網羅的な遺伝子発現マイクロアレイ解析、ゲノムワイドなDNAメチル化/ヒドロキシメチル化解析、ならびにクロマチン免疫沈降法によりTET1は有糸分裂関連遺伝子のエンハンサー領域に結合し、転写活性に関連するCpG-shore/shelf領域のDNAメチル化状態を制御していることがわかった。これらの成果については複数の学会にて報告しており、学術論文としても現在投稿中である。
2: おおむね順調に進展している
TET1の消化器がんにおいて果たす機能の一部を明らかとできている。TET1ががんの治療標的となりうる知見も得られ、結果についても学会で報告でき、学術論文についても投稿中である。
in vivoモデルなどをもちいたより臨床に則したTET1阻害による抗腫瘍効果の検討を進めたい。
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