研究課題/領域番号 |
26860497
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研究機関 | 新潟大学 |
研究代表者 |
上村 博輝 新潟大学, 医歯学総合病院, 医員 (40706420)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | sMICA / 慢性B型肝炎 / 抗腫瘍抗体 / ADCC / CDC / 肝細胞癌 / 膵癌 |
研究実績の概要 |
臓器移植で拒絶の因子となるnon-HLA抗体の一つである抗MICA抗体の肝細胞癌での出現は腫瘍関連抗原(TAA)として肝細胞膜に表出したMICAリガンドがADAM9などの作用により肝細胞膜より切断され、血清中に可溶性MICA(sMICA)として流出した際に一部が抗原提示細胞にとりこまれ、自己抗MICA抗体が産生される可能性を考慮していたが肝細胞癌症例については自己アリルとの同一性がとれていない。B型肝炎由来の肝細胞癌のsMICA濃度とC型肝炎由来の肝細胞癌のsMICA濃度に差があることについては、発癌までの時間(B型肝炎由来の肝細胞癌では若年発癌があること等)と関わっている可能性があり更なる検討をしている。また、現在この研究より端を発して癌性腹水中に含まれる膵癌、胃癌を含む消化器癌のTAAの同定と抗体依存性細胞性細胞障害活性(ADCC)、補体依存性細胞障害活性(CDC)を利用した新規免疫治療の可能性について研究を持続している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
①51例の肝癌手術検体を用いてMICAリガンドの出現について免疫染色を行ったところ,12症例にMICAの発現を認めることができた。また自然消退した肝細胞癌については血管内皮細胞での染色性を強く認めた。肝生検検体については染色性が不明瞭であっため肝炎についてはデータをまとめられなかったが、肝細胞癌の背景肝である肝硬変については10例について細胞質での染色を認めた。また肝癌自然消退例ではC4dの発現を認め補体依存性細胞障害活性(CDC)の関与が考慮できた。②sMICAについては血清(保存血清を含む)を用いてELISA測定を行いコントロール群5例(疾患なし)36.0±7.3pg/ml,慢性肝炎10例(C型肝炎)232.7±157pg/ml,肝細胞癌8例(B型肝炎由来)95.4±36.7pg/ml,肝細胞癌20例(C型肝炎由来)300±203pg/mlとcontrolと比較して肝疾患をもつ場合に、報告通りにsMICAの上昇を認めたが今回の検討ではB型肝炎由来の肝細胞癌ではC型肝炎由来のものと比較してsMICA血中濃度が有意に低かった。③抗MICA抗体については60例の検討を行い、出現を認めたものはC型肝炎由来の肝細胞癌の10例であった。自然消退例を1例含んでおりこれはTAAとして出現したMICAに対する抗体の関与による抗体依存性細胞性細胞障害(ADCC)の関与の可能性を考慮した。④抗MICA抗体を持つ10症例のうちでアリルを測定できた症例は2014年5月時点で6例であったが自己のアリルとは異なるアリルであった。
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今後の研究の推進方策 |
自己免疫性肝炎には自己アリル同一性の抗HLAclassⅡ抗体をもつ症例が液性免疫機序により強い肝障害をもつことが途中経過で判明できた。同時測定で抗MICA抗体の出現はないが40例のアリル測定を行っており、今後の抗MICA抗体の出現についてモニタリングしていき自己同一性をもつ症例があるのか検討する。B型肝炎由来の肝細胞癌のsMICA濃度とC型肝炎由来の肝細胞癌のsMICA濃度に差があることについては、発癌までの時間(B型肝炎由来の肝細胞癌では若年発癌があること等)と関わっている可能性があり既報がないため早急に結果をまとめたい。また現在この研究より端を発して膵癌、胃癌を含む消化器癌のTAAの同定とADCC、CDCを利用した新規免疫治療法を並行して開始している。
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次年度使用額が生じた理由 |
抗MICA抗体アリル計測について検体数を年間の肝細胞癌治療患者数を考慮して80症例以上を見込んでいたが、抗MICA抗体そのもの検出が計測できた症例が50症例以下となってしまった。そのためその後にアリルの計測に持ち込めた症例数50症例以下となってしまい、当初の見込みより少なく次年度使用額が発生してしまった。
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次年度使用額の使用計画 |
前記のごとく抗MICA抗体とともに抗腫瘍抗体の出現について肝癌を主体とする消化器癌の癌性腹水を用いる研究へ進展させており、今年度予定しているADCC活性、CDC活性に計測する実験への支出を予定している。
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