研究課題
現在、レチノイドX受容体(RXR)シグナルをdominant negative に阻害する蛋白(リン酸化 RXRα)を発現するトランスジェニックマウスの表現型解析をすすめている。対照群(リン酸化蛋白非発現群)との比較において、体重変化や飲水・摂食量には有意な差を認めなかった。また、比較的短期間(離乳後4週間)の観察では、当初予想されていた肥満傾向や糖代謝異常、脂肪肝形成がみられなかったことより、高脂肪食およびグルタミン酸ナトリウム誘発性の肥満モデルを作製し、比較検討した。グルタミン酸ナトリウム誘発性肥満モデルにおいて、インスリン負荷試験および肝組織所見に有意な差は認めなかったが、グルコース負荷試験の結果からリン酸化 RXRα発現群において耐糖能が低下している傾向がみられた。これらのことより、RXRシグナル阻害は脂肪肝形成については影響を与えないが、耐糖能異常を引き起こす、すなわちRXRシグナルは糖代謝において重要な役割を担う可能性が示された。同時に行っているレチノイン酸受容体(RAR)シグナルをdominant negative に阻害する蛋白(dnRAR)を発現するトランスジェニックマウスの解析では、対照群に比し、早期からの体重増加が確認された。さらに、病理組織にて比較的早期からの脂肪肝形成も認めている。これらのことより、脂肪肝形成に関してはRARシグナルが非常に重要な役割を担っていることが示唆された。
3: やや遅れている
現在までに、リン酸化 RXRα発現マウスおよびdnRAR 発現マウスの表現型解析が計画通り行われていない。短期実験における肝病理組織の比較については計画をやや先取りした形となったが、(リン酸化 RXRα発現マウスの)通常飼育での表現型に明らかな差が認められなかったことから、食事や薬剤による肥満・脂肪肝の誘発が必要となったことが、研究遂行が遅れている理由の一つである。さらに、計画されていた細胞株の実験については、現在細胞数や薬剤濃度に関する条件設定を行っており、これまでに有用なデータが得られていない。
表現型解析については、比較的長期の観察を行い肥満・脂肪肝形成のみならず糖代謝も含めて解析をすすめていく。さらに、肥満に関連する各種アディポカインについても比較を行い、病態に及ぼす影響を調べる。また、非アルコール性脂肪肝炎を誘発する目的でメチオニン・コリン欠乏食やストレプトゾトシン(STZ)も使用し、肝線維化さらには肝発癌への影響についても検討する。また、細胞株の実験を早急に軌道に乗せ、多種の薬剤(RXRおよびRARのagonist/antagonist)による影響を検討し、in vivo の実験へ応用可能な薬剤の絞り込みを行う。
今年度は、特に細胞実験に関しては準備段階であり、来年度における詳細な実験のために費用が増加することが予想される。そのため、次年度への繰り越しが生じた。
主な支出は実験動物の管理と試薬の購入が考えられる。その他、研究成果発表のため、国内外での学会参加旅費に充てられる。
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