研究実績の概要 |
本研究課題では、血清メタボロミクスを用いた膵がん診断手法を開発し、スクリーニング法として有用とかどうかを検証した。平成27年度は、「膵がん患者検体における血清・血漿メタボロミクスによる包括的代謝プロファイリング」と、「血清・血漿メタボロミクスを用いた膵がんスクリーニング法の確立」を到達目標とした。膵がん患者血清59検体と健常者血清59検体を用いてメタボロミクスによる包括的代謝プロファイリングを行った。分析では、GC/MSによる水溶性代謝物分析にLC/MSによる脂質分析・陽イオン性代謝物分析・陰イオン性代謝物分析を組み合わせることで、従来の約5倍である約600成分を測定の対象とすることができた。また、分析の信頼性を担保するため今回新たに導入したクオリティコントロール法によって、分析の再現性が良好な物質236成分を明らかにすることができた。学習セットとして膵がん患者と健常者の各群15検体ずつの結果を比較すると、75成分に有意差が認められ、特に6成分ではROC曲線解析における曲線下面積値(ROC-AUC)が0.7以上であり、膵がんの診断マーカーとなり得る可能性が示唆された。さらに、多重ロジスティック回帰分析によってMannoseと1,5-anhydro-d-glucitolを組み合わせた診断モデルを作成すると、ROC-AUCは0.951で、感度100%、特異度80%であった。この診断モデルを検証セットとして残りの膵がん44検体、健常者44検体に当てはめると、感度72.7%、特異度84.1%であった。検証セットにおけるCA19-9の感度は68.2%であり、今回の診断モデルは膵がんの検出能に優れていることが確認できた。
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