本年度は,まず超高脂肪コリン欠乏メチオニン減量飼料をマウスに負荷して非アルコール性脂肪性肝炎モデルを作成し肝臓の炎症,線維化を評価した.コントロールとして用いたコリン欠乏メチオニン減量飼料投与マウスでは,脂肪肝,肝の腫大化が見られ,一部に発癌したマウスが存在したが,超高脂肪コリン欠乏メチオニン減量飼料を投与したマウスでは8週後に肝の腫大と脾腫が見られ,さらに8-12か月後には肝臓に癌を伴うマウスが増加した(一部では黄疸が見られた).この結果より,アミノ酸置換負荷下において高脂肪食が発癌を促進することが分かった.なお,TLR2,TLR4,TLR9各ノックアウトマウスでも超高脂肪コリン欠乏メチオニン減量飼料の投与によってC57BL/6Jマウスと同様に線維化,発癌が見られた.TLR4はグラム陰性の細菌構成成分のLPSやパルミチン酸などの飽和脂肪酸を認識して炎症を引き起こすことが知られているが,このモデルにおいて各自然免疫応答受容体のリガンドである菌体成分や脂肪酸などが門脈を経由して肝臓流入し,単独で肝臓内の細胞を刺激して線維化,発癌を誘起することは否定的と考えられた.高脂肪食により腸内細菌叢が変化することは知られている.そこで,肝臓に炎症と発癌を引き起こす因子として,高脂肪食により変化した腸内細菌叢が産生する代謝産物に着目し,どのような腸内細菌による代謝産物が門脈を経由して肝臓に流入するか,門脈血の血清を用いて網羅的にメタボローム解析を行った.今後は,各負荷マウスの腸内細菌叢の変化も解析することが必要と考えている.
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