研究課題
Barrett食道の長期経過観察例では腺癌を合併するリスクが高いことが知られているが、癌やその前癌病変であるdisplasiaを内視鏡的に診断することはしばしば困難である。本研究では、病変を特異的に認識する分子イメージングシステムを構築することを目的として取り組んでいる。初年度はBarrett腺癌症例の検体数に限りがあるため、より癌検体を獲得しやすい腺癌である大腸癌細胞を用いて基礎的研究を行った。大腸に発生する腺癌である大腸癌にて高頻度に発現を認めるEGFR(Epidermal Growth Factor Receptor)は、食道扁平上皮癌の病態形成にも関係していることが報告されており、Barrett腺癌においても高頻度に発現している可能性が考えられる。われわれはまず、EGFRをターゲットし、大腸癌細胞株におけるEGFR発現数をフローサイトメトリー法にて算出、AlexaFlouor488標識抗EGFR抗体の蛍光発現強度を測定した上で、ヒト大腸癌移植ヌードマウスを用いてEGFR発現および標識セツキシマブのIn vivo 分子イメージングを行うとともに、セツキシマブにおける投与前後におけるEGFR発現と治療効果の関連を評価した。大腸癌細胞におけるEGFR発現する宇は蛍光強度と相関し、セツキシマブ投与後における蛍光強度は投与前に比較して著しく低下していた。EGFR発現の強い細胞株を移植したヌードマウスにおけるEGFRのin vivoイメージングでは48時間後の蛍光ピークを認め、標識セツキシマブを用いた検討でも同様の動態が観察された。EGFRをターゲットとする光イメージング技術が癌の分子特性診断に有効であることが確認された。現在同様の方法をBarrett腺癌に応用することでBarrett腺癌のイメージングに技術の開発を進めている。
3: やや遅れている
現在手法の確立のための基礎実験を行っている。分子イメージングのターゲットとなるペプチドを決定するためには当初計画より、さらに多数症例のサンプルが必要と考えられたが、、現時点では必要十分なサンプル数を得ることができておらず、他施設症例も含めたサンプルの収集を進めている。
基礎実験により技術自体の確立はできてきていると考えられる。現在まで進めてきたEGFRがBarrett腺癌での発現の状態を確認できれば、EGFRについての検討を行う。また十分量のサンプル数が確保された段階で、ターゲットペプチドの絞り込みに移る予定である。元々症例数の少ない疾患であるため、サンプルの収集については他施設とも連携し、できるだけ漏れのないように、サンプル確保にあたりたいと考えている。
イメージングのためのターゲットとなるペプチドの決定を行うためのサンプル収集が不十分のため実験計画にやや遅れが生じており、物品購入予定が次年度に繰り越しになるため。
次年度に候補ペプチドの絞り込みを行い、研究計画で予定された研究を進めていく。
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