選択的ポリアデニレーションによる大腸癌悪性形質獲得のメカニズムを明らかにするために、上皮間葉移行モデルの構築を行った。このモデルにより得られた細胞集団は、間葉系マーカーの上昇ならびに、遊走が獲得していることを確認した。この細胞集団を用いて、上皮間葉移行に伴い変化する3'end processing factorsの発現変化を解析したところ、CPSFファミリーの発現が上昇することを確認した。CPSFファミリーは、ポリアデニレーションシグナルの認識な重要な役割を果たしており、3'UTR長の調節に必須な因子である。Exon array を用いた解析により、3'UTR長の変化する遺伝子を同定することに成功した。CPSFファミリーの発現パターンの変化が、癌の悪性形質獲得を促進する可能性が示された。また、3' end processingに関わるSRタンパク質ファミリーのひとつであるSRSF7に関しても解析を進めた。SRSF7は、選択的ポリアデニレーション制御に関わる因子であり、SRSF7のノックダウンにより、細胞周期の停止が生じることを明らかにした。この細胞周期の停止のひとつのメカニズムに、HuRタンパク質の発現制御を介したp21タンパク質の誘導を明らかにした。SRSF7のノックダウンによりHuR 3'UTR長は長くなっており、HuRの発現調節のひとつのメカニズムとなっている可能性が示唆された。
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