研究課題
本研究の目的は肝細胞癌での特異的miRNAと血管新生分子の同定、治療における標的分子としての可能性、診断及び治療の有効性のマーカー、予後判定としての有用性を明らかにすることである。発現に変化を示したmiRNAと血管新生分子に関する生物学的特徴を検討することで、今後、肝細胞癌の発生・進展過程における新たな発見、適切な個別化治療を行うためのバイオマーカーや分子標的治療薬の開発といった診断・治療への応用が期待される。昨年度までに、マイクロアレイを用いて肝細胞癌細胞株におけるmiRNAの発現を網羅的に解析し、発現プロファイルを作成後、クラスター解析を行った。それらの結果により、種々の肝細胞癌細胞株において特異的に発現変化を起こしたmiRNAを同定した。本年度は、肝切除術もしくはラジオ波焼灼療法による肝細胞癌の根治術を行った肝細胞癌患者の末梢血液を用いて、治療前後でのmiRNAの変化について検討した。それぞれの血清サンプルからtotal RNAを抽出し、純度を確認した後、マイクロアレイを用いて網羅的に解析した。治療前後でmiRNA量は明らかな変化を示し、また異なるクラスターを形成していた。治療前後で有意に変化していたmiRNAを同定し、それぞれの分子は根治術後に低下していることが示された。また、根治術後に上昇するmiRNAは存在しないことが確認された。これらの分子については肝細胞癌の診断及び治療の有効性に関する新たなマーカーの候補となりうるcirculating miRNAと考えられた。
3: やや遅れている
肝細胞癌細胞株や肝細胞癌に対する根治術の前後での患者の末梢血液において変化を示した種々のmiRNAを検討しており、肝細胞癌における特異的なmiRNAについては同定が進んでいる。しかし、それらの分子と肝発癌分子機構において重要な役割を担う血管新生分子であるIL-8およびbFGFとの関連性についての検討がやや遅れていると考えられるため。
肝細胞癌において同定した特異的なmiRNAと肝発癌分子機構において重要な役割を担う血管新生分子であるIL-8およびbFGFとの関連性についての検討を引き続き行う。その結果を踏まえて、ヌードマウスを用いたIL-8発現肝細胞癌モデルとbFGF発現肝細胞癌モデルを作成し、肝細胞癌を抑制すると予想されるmiRNAあるいはanti-miRNA を投与することにより、肝細胞癌の縮小もしくは休眠に効果のある分子標的治療薬となりうる可能性について検討したい。
当初の計画より進捗状況がやや遅れており、必要物品の購入がやや少なかったためと考えられる。
肝細胞癌において同定した特異的なmiRNAと肝発癌分子機構において重要な役割を担う血管新生分子であるIL-8およびbFGFとの関連性についての検討を引き続き行う。その結果を踏まえて、IL-8発現肝細胞癌モデルとbFGF発現肝細胞癌モデルを作成するにあたり、ヌードマウスの購入が必要となる予定である。
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Int J Oncol.
巻: 47 ページ: 535-542
10.3892/ijo.2015.3036. Epub 2015 Jun 5.