研究実績の概要 |
本研究の目的は、肝癌幹細胞においてmiR-122発現低下が肝癌幹細胞のstemnessに対し、促進的に働くことを明らかにすることである。 レンチウイルスを用い、肝癌細胞株(HepG2 cell、PLC/PRF5 cell)のmiR-122の定常発現株を作製しこれら解析を行ったところ、フローサイトメトリーによる解析で各種癌幹細胞表面マーカー(CD133, EPCAM, CD44, CD13, CD90)のうち、CD44陽性細胞分画がmiR-122定常発現細胞では低下していることが明らかとなった。一方でCD44発現量はmiR-122の一過性発現によって変化せず、これらのことはmiR-122発現量変化はCD44陽性肝癌細胞の細胞増殖シグナルに何らかの影響を及ぼすことを示唆している。 まずはmiR-122発現とCD44陽性肝癌細胞の関係性を見出すために、ソーティングによりCD44陽性肝癌細胞(CD44(+))を抽出し、細胞増殖能、及び5FU、CDDPなど抗癌剤に対する耐性能を検討した。control CD44(+)細胞と比較したところ、miR-122定常発現CD44(+)で細胞増殖能、抗がん剤対性能は軽度の低下が認められた。さらにmiR-122がCD44陽性肝癌幹細胞に与える影響を明らかにすべく、sphere形成能について比較したところ、miR-122定常発現CD44(+)ではcontrol CD44(+)と比較しsphere形成能の低下が認められた。これらsphereを形成した細胞は数回の継代によりさらに濃縮することができるが、濃縮後に細胞内の癌幹細胞関連RNA発現をアレイ解析により比較したところ、miR-122定常発現CD44(+)では、肝癌幹細胞stemnessに対し促進的に働く遺伝子発現の低下が多く認められた。これらのことは、miR-122発現がCD44陽性の肝癌幹細胞のstemenessを抑制していることを示唆すると考えられる。 現在、in vivoにおいてもmiR-122発現がCD44陽性肝癌幹細胞のstemenessを抑制することを明らかにすべく、SCIDマウスへのmiR-122定常発現CD44(+)の皮下移植に伴う腫瘍形成能の解析を継続している。
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