研究課題
我々は久留米大学、京都大学、広島大学からの多施設共同研究を通して非アルコール脂肪肝炎(NASH)および非アルコール性脂肪肝疾患(NAFLD)の患者末梢血より抽出したゲノムDNAを用いてこれまで多くの疾患感受性遺伝子多型の同定を行ってきた。我々はPNPLA3およびSAM50、PARVBの3つを疾患と強く相関する遺伝子多型として同定して報告してきた。しかしながらこれらの疾患感受性遺伝子の機能がいまだ不詳であること、それ以前の問題としてこれらの遺伝子の転写、即ち肝臓でどの細胞に発言しているかの局在、およびそこでの遺伝子発現の程度、つまり発現がリスクアリルを持っていると低下するのか、増加するのかなどの機能的解析の検討が必要であると考えた。PARVB遺伝子の機能は肝細胞における脂肪化促進及びアポトーシス促進を促す可能性が培養細胞を用いた過去の報告から強く示唆される。また、我々のGWAS解析の結果ではPARVB遺伝子のリスクアリルのSNPsはプロモーター領域にあることがわかっている。この点構造遺伝子領域の異常を呈するPNPLA3(たとえばI148Mなど)とは異なる。以上より今回の研究は本遺伝子の患者肝臓での発現の変化を解析し、in vitroの培養細胞ではプロモーター領域の遺伝子変異がPARVB発現に与える直接的転写機能の移譲を解析した。メチル化解析の結果PARVBは脱メチル化を起こしてプロモーターの転写活性が亢進し、発言自体が増加していた。この結果に基づいて本遺伝子の発現異常(過剰)が肝細胞にどのような異常を与えるかを培養細胞および過剰発現マウスを作成し、現在解析の途中である。
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すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件、 オープンアクセス 2件)
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