研究課題
世界的に増加する大腸癌のリスクや予防についての研究は急務である。肥満・メタボリックシンドロームの大腸癌への関与はほぼ確実とされているが、肥満因子がどのような機序で大腸発癌を促進するのかはっきりしていないのが現状である。今回の研究では、飽和脂肪酸がTLR4を介した経路でJNKを活性化し、大腸細胞増殖を亢進していると仮定し、マウスへの経内頸静脈的脂肪酸持続投与という手法を使用し実証を試みた。経内頸静脈的脂肪酸持続投与により特定の条件でJNK活性の亢進を認めたが、データのばらつきが大きく、有意差は得られなかった。経静脈投与はn数が確保できずデータのばらつきがあるため、腹腔内投与にて1種類の血中脂肪酸濃度を上昇させる方法に変更した。パルミチン酸をマウスに腹腔内投与し、大腸上皮細胞増殖および細胞増殖に関わる分子発現を検討することで評価した。脂肪酸投与群で有意に細胞増殖は亢進しており、またcMyc、CyclinD1発現が亢進していた。飽和脂肪酸の発癌における関与を明らかにするためにアゾキシメタン(AOM)による発癌モデルを用いて大腸上皮細胞増殖およびそれに関わる分子発現を検討した。脂肪酸腹腔内投与により細胞増殖が有意に亢進したが、JNK活性(リン酸化)は脂肪酸投与で亢進するものの有意差は認めなかった。またcMycやCyclinD1の発現にも有意差はなかった。さらにTLR4 KOマウスを用いた発癌モデルで、脂肪酸が大腸上皮細胞増殖に与える影響を評価した。TLR4 KOマウスの大腸上皮の細胞増殖は脂肪酸投与の有無により差がなかった。脂肪酸投与における飽和脂肪酸/TLR4経路の関与が示唆される結果であった。脂肪酸の大腸発癌における役割をさらに解明することで欧米食・肥満など生活習慣を背景として増加している発癌促進機序が明らかになり、今後大腸癌の化学予防の標的分子の同定につながるものである。
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