研究課題
炎症性サイトカインである腫瘍壊死因子(tumor necrosis factor: TNF)は、種々のサイトカインの誘導や細胞増殖、分化、アポトーシスによる細胞死の誘導など多様な細胞現象に重要な役割を果たしている。 TNFの過剰な産生はさまざまな炎症性疾患や癌の発症(胃癌、乳癌など)に関与し、TNFはこれらの治療の標的となっているが、大腸癌においてはその臨床応用は未だ途上である。本研究ではこれらの知見に基づき、大腸発癌過程におけるTNF-R1関連因子の分子機構を明らかにし、また大腸癌におけるTNF-R1のバイオマーカーとしての臨床応用を目指すものである。今回我々は、TNF-R1ノックアウトマウスやTNF-R2ノックアウトマウスを用いて大腸発癌実験を行い腫瘍形成への影響や、正常粘膜・腫瘍粘膜におけるTNF-αと受容体の発現などをPCR法や免疫染色法で明らかにしつつ、その下流シグナルであるJNK、NF-κB、caspase3の発現をリン酸化ウエスタンや免疫染色法で明らかにした。さらには抗TNF-α抗体(MP6-TX22)を投与した大腸発癌モデルマウスを作成し、抗腫瘍効果を確認した。またTNF-αレベルは病態の活動性を反映するマーカーとしても注目されるが、TNF-αの血中半減期は20分以下と短く、しかもpg/mLという非常に低濃度のレベルで存在するため、測定を困難なものとしている。一方、TNF-α受容体のTNF-R1、TNF-R2はTNF-α刺激による可溶化(Shedding)を受け、血中に可溶性TNF-R1、R2として放出される。TNF-R1については、潰瘍性大腸炎患者において健常者より有意に高いという報告があるが大腸癌に関する報告は少なく、我々は大腸腺腫患者における血清TNF-R1値を世界に先駆けて測定し、有意に高いことを突き止めた。またROC曲線下面積も0.928と高くバイオマーカーとしての有用性が示唆された。
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Lancet Oncol.
巻: 17 ページ: 475-783
10.1016/S1470-2045(15)00565-3.
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