クローン病に於いて腸管狭窄は手術理由の最も多くを占める重要課題である。本研究では末梢血ファイブロサイトが腸管線維化に関与する可能性に注目し、腸管狭窄の機序解明を目指した。 腸管線維化におけるファイブロサイトの役割と機序を明らかにするため、ファイブロサイトの同定やコラーゲン産生細胞の追跡が飛躍的に容易になるCollagen-GFP マウスを用いた骨髄キメラマウスを作成した。ファイブロサイトは骨髄細胞由来である。正常マウスにX線を照射することでレシピエント由来の骨髄細胞を除去した後、ドナーマウスであるCollagen-GFPマウスの骨髄細胞を経静脈的にレシピエントマウスに投与した。移植処置を行ったマウスでは骨髄死が抑制され、脾臓中にCD45陽性コラーゲン陽性細胞が検出されたことから、レシピエントマウスの骨髄細胞をCollagen-GFPマウス由来の骨髄細胞によって再構築することが出来たと考えられた。本モデルマウスを用いて腸管線維化の疾患モデル系である慢性DSSモデルを実施し、腸管線維化に於けるファイブロサイトの役割の解明を試みた。しかしながら、本モデルマウスに於いて腸管線維化部位でファイブロサイト由来であるGFP陽性細胞は顕著に認められなかった。今後、TNFαの過剰産生というクローン病と非常に近いサイトカイン環境を持つTNF⊿ARE マウスでファイブロサイトと腸管線維化の関係を検討予定である。 また、潰瘍性大腸炎では大腸癌が頻発するが、そのメカニズムは不明である。近年、組織線維化が発癌に関与する可能性が注目されており、前述のCollagen-GFPマウスを用いて腸管線維化と発癌の関連について腸管の炎症性発癌モデルであるazoxymethane-DSSモデルを起ち上げた。今後、再び研究できる場所や環境が確保できた時に、本モデルにおいて腸管線維化と発癌の関係について、コラーゲン陽性細胞をマーカーとして機序解明を検討予定である。
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