研究課題
胆汁酸曝露および中心性肥満は食道腺がんの発生における主要因のひとつである。我々は食道腺がんのヒト切除標本において、腫瘍促進性のmicroRNAであるmiR-221/222がバレット食道部に比して食道腺がん部で有意に上昇することを報告した (Gastroenterology 145:1300, 2013)。一方、アディポネクチンは中心性肥満の悪化に伴って血中濃度が低下し、また抗腫瘍効果を有するアディポサイトカインとして期待されている。そこでアディポネクチン刺激がmiR-221/222高発現性食道腺がん細胞に与える影響を検討した。食道上皮細胞においてmiR-221/222の強発現および発現抑制操作を加え、p27Kip1の蛋白量がmiR-221/222に依存していることを確認した。さらにp27Kip1の変化が、バレット食道の形成過程で重要な転写因子であるCDX2の蛋白量にも影響することを発見した。一方、細胞株に胆汁酸を曝露するとmiR-221/222の発現量が増加した。このことにより、胆汁酸の食道上皮への曝露が、miR-221/222の発現上昇を経てp27Kip1およびCDX2の蛋白量を減少させることで、腫瘍促進的な役割を担っていることを明らかにした。またmiR-221/222強制発現細胞および胆汁酸受容体アゴニスト曝露によってAdipoR1の発現量が減少した。一方、アディポネクチン刺激下での細胞増殖能は、miR-221/222強制発現においても抑制されることから、アディポネクチンはAdipoR2を介した腫瘍細胞増殖抑制作用を有しているものと考えられた。
2: おおむね順調に進展している
アディポネクチンおよびアディポネクチン受容体作動薬による食道腺がん細胞に対する増殖抑制作用とその機序の検討は、一部当初の仮説とは異なる結果が得られているものの、順調に進展している。
in vitroでの機序の詳細解明に向けた検討を進めるとともに、食道腺がんモデルマウスを用いたin vivo評価系の構築を予定している。
ほぼ予定通り全額使用したが、1万円未満の余剰金が生じたため次年度に繰り越した。
次年度に消耗品費として計上を予定している。
すべて 2015 2014
すべて 雑誌論文 (6件) (うち査読あり 6件、 オープンアクセス 2件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (3件)
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