研究課題
食道腺がんは胃食道逆流症の重篤な合併症のひとつであり、特に胆汁酸の食道内への逆流が重要であることが知られている。また内臓脂肪型肥満(中心性肥満)は食道腺がんの主要なリスク因子として挙げられている。実際我々は、本邦における健常人2608名を対象として、胃食道逆流症と内臓脂肪面積の関連性についての調査を実施し、内臓脂肪面積が50平方cm上昇するごとに逆流性食道炎のリスクが男性では1.21倍、女性では2.31倍上昇することを報告した(PLoS One, 2015)。しかし肥満が食道腺がんを誘引する分子的機序は十分に明らかでない。一般に中心性肥満の進行に伴い、血中アディポネクチンが低下することが知られていることから、本研究では食道上皮に対するアディポネクチン刺激が腫瘍化を抑制するという仮説のもとで検討を行った。我々は既に、腫瘍促進性マイクロRNAであるmiR-221/222が、胆汁酸曝露による食道腺がんの発がん促進に重要な役割を担っていることを報告しており、アディポネクチン刺激がこのカスケードに対して如何なる作用を及ぼすかを解析した。その結果、アディポネクチンはmiR-221/222の発現量には影響を与えないが、miR-221/222の強制発現によって生じる細胞増殖能の亢進をキャンセルできることがわかった。またmiR-221/222の強制発現によりCOX2が上昇する一方、アディポネクチン刺激によってAMPKの活性化を介して、COX2発現も抑制することも見出した。本研究より、胆汁酸逆流と中心性肥満をあわせもつ食道腺がんハイリスクの症例に対して、アディポネクチン受容体作動薬による化学予防が有効となる可能性が示唆された。
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