研究課題
我々は,ADAM10 floxマウスとvillin-CreERマウスを交配させ,上皮特異的なADAM10ノックアウトマウスを作製した。タモキシフェンによるADAM10ノックアウト誘導により,腸管上皮の著明な杯細胞の数の上昇と幹細胞の減少を観察しえた。ADAM10ノックアウト上皮は幹細胞機能分化および分化亢進のため,継時的な消失を示した。同様な形質はオルガノイドによる腸管上皮幹細胞培養でも確認できた。ADAM10はNotchリガンドの細胞内ドメインの切断によるシグナル活性化に関与しており, 本ノックアウトマウスではNotchシグナル活性の低下を認めたことから,Notchシグナル制御異常が幹細胞消失を誘導したと考えられた。我々は,さらにADAM10阻害薬であるGI 254023Xをオルガノイドまたは野生型マウスに投与し,Notch活性の阻害と杯細胞分化亢進,幹細胞消失が確認できた。次に,ADAM10阻害薬の治療効果を検証するため,ヒト大腸がんより樹立した大腸がんオルガノイドに対し,GI 254023Xの投与を行った。残念ながら大腸がんオルガノイドに対しては杯細胞分化作用および幹細胞抑制作用を示さず,ADAM10阻害単剤による治療効果は低いことが示唆された。大腸がんではADAM10のオルソログであるADAM17を発現しており,抵抗性の原因となったと考えられた。今後,他剤との併用により,ADAM10阻害薬を用いた抗癌治療開発のさらなる検討が必要である。
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