これまでにヒトiPS細胞より分化誘導したCD13(aminopeptidase N)とCD133(Prominin 1)両陽性細胞文革に、高増殖性で肝細胞・胆管系細胞への2方向分化能をもつ肝前駆細胞様細胞が濃縮されていることが明らかになっている。ヒトiPS細胞由来CD13+CD133+細胞の細胞表面分子に注目し、網羅的な細胞表面分子の探索を行い、にヒトiPS細胞由来肝前駆細胞の性状解析と増殖機構の解明を目的とした。ヒトiPS細胞をサイトカイン添加によって肝細胞系と分化誘導し、CD13+CD133+細胞画分を116種類の表面抗原抗体を用いてフローサイトメトリー解析を行った。その結果、CD13+CD133+細胞画分のほとんどに発現する細胞表面分子として、20種類を同定した。興味深いことに、CD13+CD133+細胞の継代培養過程で、20種類の分子の中でCD221(IGF-1R)とCD325(N-CAM)の発現が低下することが分かった。継代後のCD13+CD133+細胞において、CD221陽性細胞は陰性細胞に比べ有意にコロニー形成能が高く、CD221の発現を維持できる細胞が前駆細胞としての性質をより保持していると考えられた。さらにCD221に対する中和抗体や特異的阻害剤の添加で増殖抑制がみられ、IGF-1Rを介したシグナルが肝前駆細胞の機能維持に重要であることが示唆された。また、強く発現する細胞表面分子の中で、CD340(erbB2)やCD266(fibroblast growth factor inducible 14; Fn14)を介するシグナルを阻害するとコロニー形成能が低下した。そして、インスリン様増殖因子(insulin-like growth factor; IGF)やTumor necrosis factor-like weak inducer of apoptosis(TWEAK)がMEFとの共培養系にて供給され、増殖に寄与していることを示した。
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