肝細胞癌は、集学的治療を行うも5年生存率は23%程度であり、新たな治療法の開発が切望されている。通常単球から文化するマクロファージは、自然免疫における抗腫瘍免疫エフェクター細胞であるM1マクロファージ/単球とそれを強力に抑制するM2マクロファージ/単球の2つに大別されるが、さらにM2マクロファージ/単球はM2aマクロファージ/単球、M2bマクロファージ/単球、M2cマクロファージ/単球の3つのsubtypeがあると報告されている。今回の研究において、進行期肝細胞癌患者の末梢血由来単球は、IL-12-IL-10+CCL1+細胞であるM2b単球であることが判明した。またそのM2b単球を効果的な免疫細胞を持たないNSGマウスに経静脈的に移入し、更に肝細胞癌を皮下に移植した所、癌は増殖した。しかし早期肝細胞癌患者の末梢血由来単球は、IL-12-IL-10-CCL1-細胞であり、静止期の単球である事が判明した。同様にその単球をNSGマウスに経静脈的に移入し、更に肝細胞癌を皮下に移植した所、癌は大きくならなかった。つまりM2b単球が癌を大きくする一つの原因であると考えられた。更にそのM2b単球は、CCL1アンチセンスにて治療を行うと静止期の単球に戻り、その単球をNSGマウスに経静脈的に移入し、更に肝細胞癌を皮下に移植した所、癌は大きくならなかった。結論として、進行した肝細胞癌患者ではM2bマクロファージ/単球が優位に産生されており、それが肝細胞癌の進展に関与している可能性があると考えられた。同細胞から分泌されるCCL1は、M2bマクロファージ/単球の性状維持に必要であることから、そのCCL1を遺伝子治療により阻害することで、抗腫瘍効果を持つM1マクロファージ&/単球を誘導する事が可能であると考えられた。
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