研究課題/領域番号 |
26860535
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研究機関 | 川崎医科大学 |
研究代表者 |
仁科 惣治 川崎医科大学, 医学部, 講師 (70550961)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 肝細胞癌 / DPP4 / CD26 |
研究実績の概要 |
慢性肝疾患では肝線維化が進展するとなぜ肝発癌し易くなるのかは不明である。一方、肝線維化を引き起こす活性化型肝星細胞は fibroblast activation protein (FAP) を産生し、血管新生等の癌細胞に有利な微小環境を形成する。さらに、FAPと同様にdipeptidaseであるDPP4はFAPと高い相同性を有し、肝線維化進展において重要な役割を果たす。そこで肝線維化と肝発癌を繋ぐ分子としてFAPとDPP4に注目し、上記科研費申請時の主な目的は、「慢性肝疾患における(背景肝の)肝線維化進展度および FAP、CD26(DPP4)発現と肝細胞癌(HCC)進展との関連性を検討する」 ことであった。 その結果、背景肝における肝線維化進展度およびFAP、CD26発現とHCC進展度との関連性は認められなかった。しかし解析を進めた結果、肝癌組織中の DPP4(CD26)発現レベルは HCC進展度と関連性していることが分かった。具体的には、41例のヒト肝細胞癌組織を用いてHCC進展とCD26発現との関係について検討を行った。その結果、CD26高発現群は低発現群にくらべ、AFPが高く、stageが進行し、がん被膜外浸潤ならびに組織学的に中低分化型が多かった。さらに細胞増殖能(MIB1-Labeling index) や血管新生 (CD34陽性microvessel density) が亢進していた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
「研究実績の概要」に記載したように、当初の研究目標である「慢性肝疾患における背景肝の肝線維化進展度、およびFAP,DPP4(CD26)発現レベルと肝細胞癌進展度の間には明らかな関連性は見出せなかった。しかし解析を進めた結果、肝癌組織中の DPP4(CD26)発現レベルは HCC進展度と関連性していることが分かった。 そこで主な研究目的を、「HCC 病態進展としての(肝癌組織における)CD26発現の意義を明らかにする」こととし、それに伴う基礎実験計画に変更の必要性が生じた。
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今後の研究の推進方策 |
当初は、DPP4阻害剤による肝発癌抑制機構の検討として、肝発癌モデルであるSTAMマウス使用する予定であった。しかし、今回の臨床データから肝線維化進展度とDPP4発現や肝発癌に関連性がなかったことから、肝癌進展に対する抑制効果の検討を目的として以下の実験を行うこととした。 【ヌードマウスに肝癌細胞を皮下移植するxenograftモデルを用いたDPP4阻害剤による抗腫瘍効果の検討】 1.6週齢♂ヌードマウス(BALBc-nu/nu)に対し肝癌細胞株(Huh-7 cell)を皮下移植する。腫瘍径が100-150mm2となった時点で、① MF食(control群)、② DPP4阻害薬添加MF食(100mg/kg/day; Low-DPP4I群)、③ DPP4阻害薬添加MF食(300mg/kg/day; High-DPP4I群) を21日間連日経口投与する3群に分ける。上記食餌投与開始 21日後にsacrificeし腫瘍径の推移を比較する。さらに、腫瘍組織における腫瘍増殖能評価(MIB-1 Labeling Index)、血管新生の評価 (CD34染色)、腫瘍組織へのNK細胞浸潤評価 (NKp46染色)を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額が生じた理由としては、臨床検体を用いた研究結果が実験計画書の予想通りにいかず、その結果として、①以後の基礎研究の内容に変更が生じたために、H26年度の実験試薬等の物品費の使用状況が若干少なくなったこと、もしくは②初年度ということもあるが研究成果が学会発表の水準までは達しなかった部分が多く、学会への発表を行う機会が得られなかったが挙げられる。
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次年度使用額の使用計画 |
これらの金額と次年度に請求する研究費を合わせた使用計画としては、主に今回計画変更した「ヌードマウスへの肝癌細胞皮下移植モデルを用いたDPP4阻害剤の腫瘍増大抑制効果」に関する基礎実験を行うことと、H26年度に行った臨床研究成果と基礎研究成果を合わせた研究成果の発表も含めた学会参加のための旅費に使用することとして使用すること等を計画している。
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