研究課題
夜間の血圧低下障害は心血管および脳血管障害の危険因子であることが知られているが、降圧薬を使用しても夜間血圧低下が不十分な症例も多い。夜間血圧低下の障害を引き起こす原因の一つに不眠が知られている。本研究は高血圧患者の血管機能改善を目指すために、高血圧患者における不眠症と血圧変動および血管機能との関連を調べることを目的とする。平成26年度は、基礎検討として、降圧治療中の患者の睡眠時間と臨床データを後ろ向きに比較検討した。当院で検診を受診した受診者のうち、降圧治療中の受診者731名(男性490名、平均年齢 65.6歳)を対象とした。1日平均睡眠時間が5時間未満の短時間睡眠群と正常睡眠時間群の2群間で血圧コントロールの状況、虚血性心疾患の合併率、脳卒中の合併率等を比較した。短時間睡眠群は正常睡眠時間群と比較し、脳卒中の合併率に差は認められなかったが、虚血性心疾患の合併率が高い傾向にあった(11.6% vs 6.9%, p=0.06)。また、両群間で血圧コントロール状況に有意な差は認められなかったが、血圧コントロール不良群では、血圧コントロール良好群に比較して、1日平均睡眠時間が短い傾向にあることが分かった(6.5時間 vs 6.6時間)。これらの基礎検討により、降圧治療中の高血圧患者においても不眠症が血圧変動障害を増悪させる可能性が示唆された。現在、高血圧患者における不眠症と血管機能との関連について、さらに詳細な検討を進めている。
3: やや遅れている
平成26年度は、降圧治療中の患者における睡眠の評価と血圧変動との関連を後ろ向きに検討した上で、不眠症と血管機能の関連について前向きに検討する予定であった。基礎検討をするためのデータベースの作成に、当初の予想よりも時間を要したため、やや遅れている状況にある。
今年度は高血圧患者を対象とし、不眠症の診断および治療による血管機能の改善効果を前向きに検討する。血管機能の評価とともに、内因性NO合成酵素阻害物質であるasymmetric dimethylarginine(ADMA)や尿中酸化ストレスマーカー等の測定も行う。また、引き続き検診の受診者データを後ろ向きに解析し、睡眠時間と心血管機能の各指標についても検討を加える。
平成26年度はデータ整理のためのパソコンや統計解析ソフトの購入等のために助成金を使用した。当初、平成26年度に行う予定であった不眠症と血管機能および血中ADMAや尿中酸化ストレスマーカー等の関連についての前向き研究の実施が遅れているため、次年度使用額が生じた。
平成26年度研究費繰越と併せて、血管機能測定や血中ADMA、尿中酸化ストレスマーカー等の測定に使用する予定である。
すべて 2015 2014
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 2件)
診断と治療
巻: 増刊号 ページ: 77-83
The Journal of Clinical Hypertension
巻: 16 ページ: 591-598
10.1111/jch.12366
PloSOne
巻: 9 ページ: e110013
10.1371/journal.pone.0110013