研究課題
不眠症は高血圧などの動脈硬化危険因子および虚血性心疾患の新規発症と関連があることが報告されている。本研究の目的は、不眠症と心機能および血管機能との関連を調べることで、高血圧を始めとする循環器疾患患者の日常診療における、不眠症の診断および治療の意義を検討することを目的とする。平成27年度は、1 心疾患非合併症例での睡眠時間と心機能指標との関連、2 虚血性心疾患で治療中の患者を対象に、血管機能と睡眠障害との関連を評価した。1に関しては、平成26年度に引き続き、当院の検診受診者で心疾患の既往のない受診者(162名)を対象とした。睡眠時間と心臓超音波検査での心機能指標との関係を後ろ向きに検討した。1日平均睡眠時間が6時間未満の短時間睡眠群(27名)と6時間以上8時間未満の適正睡眠時間群(135名)の二群に分け、心機能指標を比較した。短時間睡眠群と適正睡眠群との間で、年齢、性別、高血圧、糖尿病および脂質代謝異常症の有病率に有意差は認められず、左室収縮能、左室拡張能指標、左室心筋重量も両群間で有意な差は認められなかった。2に関しては、当院循環器内科通院中で、虚血性心疾患に対して治療中の患者を対象とし、睡眠状態の評価、血管機能評価、尿中酸化ストレスおよびメラトニン代謝産物測定を前向きに検討している。22名の測定が終了した。22名中8名の患者に睡眠障害を認めた。睡眠障害のある群では、ない群と比較して、有意に血管内皮機能が低下していた(lnRHI0.35±0.21 vs 0.62±0.29)。現在、虚血性心疾患患者における不眠症と血管機能の関連について、さらなる検討を進めている。
3: やや遅れている
上記2の研究で、当初血管機能測定にもちいる予定だった機器は再現性に問題があった。そこで、再現性に優れた機器を用いるよう計画を変更した。その結果、販売元との共同研究契約の締結および倫理委員会への再申請が必要となり、研究再開まで8か月を要したため。
今年度は、引き続き虚血性心疾患で治療中の患者を対象とし、血管機能と睡眠障害との関連を前向きに評価する。現時点で、目標症例数の半分のエントリーが終了した。目標症例に達するまでエントリーを続ける。
研究計画の大幅な見直しのため、年度内に目標症例を達成することができなかったため。また、尿中酸化ストレスおよびメラトニン代謝産物濃度の測定を外部業者に委託しているが、測定に1ヶ月から3ヶ月を要すること、検体を一定本数まとめた後の一括測定しか対応していないことから、次年度に使用額が生じた。
血管機能測定に用いる機器のレンタル料および消耗品代、尿中酸化ストレスマーカーおよびメラトニン代謝産物濃度の測定等に使用する予定である。
すべて 2016
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件)
Journal of Cardiology
巻: Mar 1 ページ: 印刷中
10.1016/j.jjcc.2016.02.003.
巻: Jan 8 ページ: 印刷中
10.1016/j.jjcc.2015.11.014.