研究課題/領域番号 |
26860546
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
鮎澤 信宏 東京大学, 先端科学技術研究センター, 特任研究員 (50459517)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | Rac1 / ミネラロコルチコイド受容体 / 心不全 / 酸化ストレス |
研究実績の概要 |
ミネラロコルチコイド受容体(MR)は心不全形成に深く関与するが、その活性化機構は未だ不明な点が多い。本研究では、最近腎臓において新規MR活性化因子として発見された低分子G蛋白Rac1が心不全においてもMR活性化に寄与することを示すとともに、心臓におけるRac1-MR経路が心不全を起こすメカニズムの解析に取り組んできた。 これまで、マウス圧負荷性心不全モデルに対してRac1阻害薬やMR拮抗薬、心筋特異的MR遺伝子欠損を用いて介入する実験を行い、圧負荷心ではRac1を介してMR活性が起こること、Rac1-MR経路の活性化がNox4を介した酸化ストレス亢進に関与し、心機能低下に寄与することを示してきた。本年度は、再現性等の最終的な確認を行い、ここまでの成果を論文にまとめて投稿した(Nobuhiro Ayuzawa, et al. Rac1-Mediated Activation of Mineralocorticoid Receptor in Pressure Overload-Induced Cardiac Injury. Hypertension. 2016 Jan;67(1):99-106.) また、新たに心筋特異的MR欠損マウスの作成・解析に取り組み、得られた産仔の予備検討において、上記Rac1-MR経路の追証を進めた。他方、心筋特異的MR欠損マウスとMR拮抗薬投与には一部効果に違いがあることがわかり、非心筋細胞のMR経路の重要性も示唆されたため、この点についても解析に着手した。 これらin vivoの実験に加えて、in vitroの実験として、ラットおよびマウス心筋細胞初代培養を用いた詳細な心筋特異的MR経路の解析を開始した。既に採取・培養に成功し、一部結果は前述の論文報告に用いた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
マウス圧負荷性心不全モデルにRac1阻害薬やMR拮抗薬、心筋特異的MR遺伝子欠損を用いて介入する実験は順調に再現性が得られ、成果をまとめて論文投稿することができた。 また、心筋細胞初代培養系を確立し、論文投稿に利用したほか、本系を用いたRac1-MR経路の解析にも予定通り着手している。 他方、当初予定していた恒常活性型Rac1心筋特異的トランスジェニックマウスについては、産仔が得られて解析を進めたところ、トランスジーンの蛋白レベルでの発現が十分に得られないことが明らかとなった。本マウスは解析を断念し、新たに心筋特異的MR欠損マウスの作成・解析に取り組んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
心筋特異的MR欠損マウスは圧負荷性心不全モデルやその他心不全モデルにおける解析を行い、心筋MR依存経路の詳細な解明を行うとともに、MR拮抗薬投与との相違から非心筋細胞MRの役割についても着目して解析を進める。 また、確立した心筋細胞初代培養系を用いて、心筋におけるMR依存的障害形成機構の詳細な解明に取り組む。in vivoとin vitroの実験の双方で得られた結果を統合しながら解析を進める予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
消耗品の調達の工夫等により、少額ではあるが当初予定より当該費用が節約されたため。
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次年度使用額の使用計画 |
今年度の研究の進展状況から、次年度はマウス飼育にかかる消耗品等の費用がわずかながら増加することが予測されるため、これらの購入に充てる予定である。
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