前年度までにマウス圧負荷性心不全モデルにおいてRac1を介してMR活性化が起こり、Nox4発現増加を経て障害形成に至ることを示してきた。最終年度は初代培養ラット心筋細胞を用いて詳細の解明に取り組んだ。 まず、圧負荷性心不全において生じる機械的刺激や生化学的刺激を培養心筋に与えてNox4遺伝子の発現変化を解析したところ、機械的伸展刺激では変化が見られない一方で、TGFβ等の投与時にNox4遺伝子の発現が増加することが明らかとなった。TGFβシグナルは圧負荷心で亢進することが知られており、昨今では心筋細胞特異的TGFβ受容体欠損マウスにおいて圧負荷性心不全が改善することが報告された。すなわち、TGFβシグナルは圧負荷性心不全の病態形成に寄与することが示されている。他方で、TGFβ刺激はRac1活性化を介したシグナル伝達経路を有することも報告されている。そこで培養心筋にTGFβ投与を行う実験系において、選択的Rac1阻害薬による介入を行ったところ、Nox4遺伝子発現の増加が抑制され、本系におけるRac1の関与が示された。今後、MR活性の解析やMR遺伝子ノックダウン等を用いて、本系におけるMRの関与についても検討する予定である。 また、新規のMR活性化機構及びその生理・病理学的意義の解明の一環として、最近注目を集めている腎尿細管間在細胞におけるMR活性化機構についての研究も開始した。本細胞におけるMR活性化は特異的リン酸化制御を介して行われるもので、同細胞に存在するNaCl再吸収調節因子であるPendrinの制御と密接に関連し、体液恒常性維持や食塩感受性に関与することがこれまでに示された。今後さらに詳細な解析を行う予定である。
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