研究実績の概要 |
内皮特異的STIM1欠損マウスを用いて血管内皮機能に関して検討を行った。 <生体レベルでの検討>内皮特異的STIM1欠損マウスはCre陰性のコントロールマウスと同比率で出生し、10~13週令時点で体重、心重量、腎重量に有意差を認めなかった。テイルカフ法による簡易的な血圧測定で有意に収縮期血圧の上昇を認めた。 <大動脈リング標本による検討>予備検討から継続し、摘出大動脈を用いて内皮依存性、非依存性弛緩反応について検討を行った。アセチルコリンによる弛緩反応は有意に欠損マウスで低下している一方、NO供与体であるSNPによる弛緩反応はコントロールマウス由来大動脈リングと同程度であった。病理学的検討においては通常の飼育条件では10~13週令マウス由来の大動脈に明らかな異常は認められなかった。 <単離大動脈内皮細胞による検討>既報のとおり(Kobayashi ら,J Atheroscler Thromb (2005))マウスから大動脈内皮細胞を単離培養することができた。これらの細胞は免疫蛍光染色(抗CD31抗体)および蛍光色素付きAcLDLの取り込みにより95%以上が血管内皮細胞であることを確認した。STIM1欠損マウス由来の細胞でSTIM1が欠損していることと唯一のhomologueであるSTIM2の発現の変動がないことをmRNA, タンパクの両方で確認した。さらにこれらのノックアウト細胞ではウシ血管内皮細胞を用いたRNA干渉によるSTIM1ノックダウン処置と同様に、calcium add-back法によるストア依存性カルシウム流入が完全に欠損していることを蛍光カルシウム指示薬を用いた検討で示した。NO産生酵素であるeNOSの活性化をウェスタンブロッティング法により検討し、STIM1欠損大動脈内皮細胞ではストア依存性カルシウム流入による活性化が著明に抑制されていることを見出した。
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